神社で仏教・修験の大護摩供 世界遺産精神を象徴 和歌山かつらぎ町

大野博

 神道、仏教、そして山岳信仰の流れをくむ修験道。異なる宗教が共存する「たぐいまれな文化的景観」――。20年前の「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」の世界遺産登録につながった、この地に息づく精神を体現するような「柴灯大護摩供(さいとうおおごまく)」が8日、和歌山県かつらぎ町の丹生都比売(にうつひめ)神社で営まれた。

 柴灯大護摩供は、不動明王の智恵(ちえ)の火の力によって人々の苦しみや悩みを焼き払い、現世での願いをかなえることを祈願するもので、密教の寺院や修験道の修行の一環として野外で行われる。

 丹生都比売神社では、1千年以上前から明治時代初期の神仏分離・廃仏毀釈(きしゃく)で途絶えるまで、高野、大峯、葛城の修験者(山伏)によって柴灯大護摩供が続けられていたとされる。境内には、鎌倉時代や南北朝時代に大峯修験者が建てた石碑や、葛城修験ゆかりの石造物も残る。丹生晃市宮司らの尽力で2015年に復活し、21年からは毎年営まれている。

 今回の大護摩供の担い手は、高野山の諸寺院の若手僧侶らが主体の「高野の火まつり実行委員会」。高野山高校宗教科の生徒たちも参加した。導師にあたる大祈師は、高野山地蔵院の豊田高暢住職が務めた。

 山伏装束姿の僧侶たちが吹く法螺(ほら)の音、般若心経の唱和や、古代インドのサンスクリット語で真言を唱える声が響く中、境内の一角に結界を張る縄には神道流の紙垂(しで)がつけられるなど、「神仏の共存」は随所に見られた。

 僧侶が斧(おの)や刀を振るって結界内を清めた後、薪を井桁に組んでヒノキの葉で覆った護摩壇に点火。高野山奥之院で燃え続ける「不滅の法灯」から分灯した種火が使われ、参拝者の願いが込められた護摩木をくべてたき上げた。

 大護摩供の進行・解説役を務めた高野山青巌寺の高井知弘住職は「世界の紛争地域の恒久平和を祈願するとともに、能登半島地震の犠牲者の鎮魂という意味合いも込めた。そんな思いを来年3月2日に高野町の金剛峯寺前で営む『高野の火まつり』につなげていきたい」と話した…

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