AIの基礎を開発、2氏にノーベル物理学賞 「機械学習を可能に」

竹野内崇宏 矢田文 佐々木凌
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 スウェーデン王立科学アカデミーは8日、今年のノーベル物理学賞を、米プリンストン大のジョン・ホップフィールド名誉教授と、カナダ・トロント大のジェフリー・ヒントン名誉教授に贈ると発表した。爆発的な発展をとげ利用が拡大する現代の人工知能(AI)の基礎を、物理学の知見を生かして開発したことが評価された。

 授賞理由は「人工ニューラルネットワークによる機械学習を可能にする基礎的発見と発明」。

 ChatGPTチャットGPT)などのAIは、人間の脳神経のつながりをまねた「ニューラルネットワーク」を通じ学習を重ねる。

 ホップフィールド氏は1980年代に、物理学と生物学の理論を融合。人工的な回路のつながりの強さを計算することで、脳の記憶の仕組みを再現できることを証明した。

 ヒントン氏はホップフィールド氏の研究に、さらに統計物理学の考え方を導入して理論を拡張。画像などの大量のデータからAIが自ら特徴を見いだして学習する「深層学習(ディープラーニング)」の技術につなげた。

 深層学習はAIの機能を爆発的に発展させ、囲碁では人間に勝る能力を獲得。チャットGPTをはじめとする生成AIにも活用されるなど、社会にも広く浸透している。加えて、素粒子の検出データの解析や天文学など物理の研究に貢献していることなどが評価された。

 一方でヒントン氏は約10年間勤めた米グーグルを2023年に退社し、AIの急速な発展にともない人間のコントロールを超える恐れについての発信も続けている。

 8日の同アカデミーの会見でヒントン氏は、自身も生成AIをよく使い「有用だ」と言及した一方で「AIが我々より賢くなり、手に負えなくなる脅威がありうる」と懸念を述べた。

 授賞式は12月10日にストックホルムである。賞金は1100万スウェーデンクローナ(約1億5700万円)で、両氏で分ける。

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この記事を書いた人
矢田文
科学みらい部|原子力・災害担当
専門・関心分野
いきもの、環境問題、沖縄、依存症
佐々木凌
西部報道センター
専門・関心分野
災害・防災、宇宙、原発・エネルギー、環境
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    鳥海不二夫
    (東京大学大学院教授=計算社会科学)
    2024年10月8日19時49分 投稿
    【視点】

    AIの父とも呼ばれるヒントン教授とホップフィールド教授がノーベル物理学賞を受賞されたことは,AI業界では驚きとともに祝われています. AIは物理学なのか?という疑問はありますが,深層学習や生成AIが世界に与えている影響を考えれば,ノーベル賞

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