警察の個人情報収集も「違法」 名古屋高裁、岐阜県に抹消命じる判決

渡辺杏果 伊藤智章
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 岐阜県大垣市で計画された風力発電施設の建設を巡り、県警大垣署が住民の個人情報を収集し、業者に提供したのは違法として、住民4人が県に賠償などを求めた訴訟の控訴審判決が13日、名古屋高裁であった。長谷川恭弘裁判長は、一審・岐阜地裁判決を変更。情報提供に加え、収集したことも「恣意(しい)的な運用がされていた」として違法性を認定、一審より増額し、原告が要求していた満額の計440万円の賠償を命じた。また、県が保有すると認められる情報の抹消も命じた。

 原告側によると、公安警察による個人情報の収集活動を、裁判所が違法としたのは初という。

 高裁判決などによると、署警備課の警察官3人は2013~14年、施設の建設を計画していた中部電力子会社「シーテック」と計4回情報交換。勉強会を開くなどした住民4人の氏名、病歴、過去の市民運動への関与などを伝えた。住民側は16年、プライバシーなどが侵害されたとして、県を提訴した。

 22年の一審判決では、個人情報の提供は個人の私生活の自由を保障した憲法13条に基づく「プライバシー情報をみだりに第三者に提供されない自由」を侵害し、違法と認定した。一方で収集は、「仮に市民運動に発展した場合、公共の安全と秩序の維持を害する事態に発展する危険性はないとはいえない」として違法性を否定。情報の抹消については「特定性を欠く」として、県と国への請求を却下していた。

 長谷川裁判長は、憲法13条が個人情報をみだりに収集・保有されない自由も保障していることに加え、原告らの活動は平和的だったとして集会や結社、表現の自由などを保障した憲法21条にも反するとして、収集の違法性を認めた。

 さらに、恣意的とした情報収集活動について、法律の規制もなく、監督する第三者機関もないと言及した上で、「警察内部の自浄作用が全く機能していない」と断じた。

 また、情報の抹消については、今後提供される恐れがあるとして、保有していると認められる情報の抹消を県に命じた。一方で、原告らの情報を国が保有していることは認められず、国への抹消請求は棄却された。

 判決を受け、原告の一人、大垣市の住職松島勢至さん(72)は「地域の問題について意見をいう、当たり前のことが、警察から危険視される世の中ではいけない。命を守る運動がやっと認められた。うれしい」と語った。岐阜県警察本部監察課は「判決内容を検討した上で、今後の対応を決めさせていただきます」とコメントした。

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この記事を書いた人
渡辺杏果
高松総局|高松市、東讃、離島、環境
専門・関心分野
地方、街、司法