第5回100円稼ぐのに1万5千円かかる芸備線 始発駅から乗って、考えた

有料記事

編集委員・石合力

 一部区間の存廃問題で揺れるJR芸備線。東側の終点新見(岡山県新見市)から、始発に乗った。午前5時16分発、備後落合(広島県庄原市)行きの1両編成。乗客は、ローカル線めぐりの鉄道ファンら2人と私だけだった。

 新見駅発の芸備線は平日で6本、土日は5本しかない。途中の東城(同市)から備後落合までの区間は、100円の営業収入を得るのに必要な営業費用(営業指数)が1万5千円を超す(2020~22年平均)。1キロあたりの1日平均通過人員(輸送密度)は20人(22年)。ともにJR西日本でワーストの区間になる。

 人口減とマイカー利用が地方で進むなか、ローカル線問題をどう考えるべきか。取材班は、その原点とも言うべき1987年の国鉄分割民営化当時の関係者に当たることから取材を進めた。

本数減らすと利便性も減 さらに利用客減る悪循環

 改革派として分割民営化を成し遂げた幹部、関わった政治家、官僚らは当時、ローカル線問題をどう考えていたのか。共通するのは、営業利益や国鉄時代の組合対策を重視するなかで、ローカル線に関する議論は、必ずしも優先順位が高くなかったという点だ。もちろん、当時の段階で37年後の今の日本がどうなっているか、見通せていたわけではないという事情もあろう。

 一方、分割民営化したJR各社にとって、管内のローカル線は営業利益を生まない「お荷物路線」扱いが強まった。本数を減らすことで利便性が失われ、利用者がさらに減る悪循環に陥る路線もある。かつて備後庄原(広島県庄原市)から広島まで直通で行けた路線はいま乗り換えが必要だ。

 日本全国のローカル線網をどうすれば維持、活性化できるか。国土交通省などの政府機関、政治家、自治体が利用者を巻き込んで議論すべき問題だが、分割民営化後のJR各社に対応が丸投げされた面もある。

記事後半では、JR旅客5社それぞれの管内の輸送密度1千人未満のローカル線を地図で紹介します。

「個別の路線だけでなく、全国的な議論を」

 そのJR各社には全国的な視…

この記事は有料記事です。残り1479文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【春トク】締め切り迫る!記事が読み放題!スタンダードコース2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
石合力
編集委員
専門・関心分野
国際政治(核問題、中東など)、芸術と社会