住民が一度ゼロになった町が失ったもの 移住者増で問われる「復興」

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力丸祥子 酒本友紀子

 東京電力福島第一原発事故に伴う避難指示が解除された福島県内の自治体は、失われたコミュニティーをどう取り戻すかという課題に直面している。特に住民が一時ゼロになった原発周辺の双葉郡8町村では、手厚い支援で子育て世代を呼び込む一方、復興の在り方を見つめ直す動きも出ている。

 福島県富岡町の交流施設で2月中旬、十数組の親子がキーマカレーをほおばっていた。移住してきた子育て世代が中心となって運営する月1回の子ども食堂だ。

 食後、町での困りごとが話題に上った。

 「子ども会や学校の保護者会がないので、地域に知り合いが増えない」「子どもも親も、互いの家を行き来する機会も少なく、近所の交流がない」「通学がスクールバスなので、地域の人と知り合えない」

 参加者によると、子育ての悩みを相談できず、子どもの預け先もないことから、町を離れる家族が出始めているという。

 震災前に約1万6千人が暮らしていた町は、13年前の原発事故で居住人口がゼロになった。2017年4月に一部で避難指示が解除されるのを前に、町は19年度末の居住人口3千~5千人を目標にした。

子育て世代の移住後押しも……

 政府も後押しし、21年度からの復興再生基本方針に「新たな住民の移住・定住」を盛り込んだ。避難指示が出た福島県内12市町村に移住すると、1世帯当たり最大200万円を支援する枠組みをつくった。東京23区から地方に移住した人向けの制度と比べ、額は倍だ。町は上乗せする形で子育て世帯に1世帯30万円、中学3年生まで年間1人18万円、最長3年間の奨励金を用意した。

 住民は少しずつ増えて21年…

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この記事を書いた人
力丸祥子
東京社会部|気象庁クラブ
専門・関心分野
防災、合意形成
酒本友紀子
福島総局
専門・関心分野
共生社会、人権、司法、国策と地方
東日本大震災

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