奥能登の4病院、看護師60人以上が退職・意向 医療維持に危機感

有料記事能登半島地震

西崎啓太朗 佐藤道隆 加治隼人 土井良典 米田悠一郎
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 今年1月の能登半島地震で被災した石川県の奥能登地域にある四つの公立病院で60人以上の看護師が退職したり、退職の意向を示したりしていることがわかった。看護師の総数約400人のうち約15%にあたる。看護師自身が被災し、生活再建の見通しが立っていない。退職者が看護師の2割に上る病院もあり、病院関係者は医療体制が維持できなくなるのではと危機感を募らせる。

「家失った」「子育て難しい」

 輪島市の市立輪島病院は地震で医療機器が損壊し、一時断水した。100人近くいた入院患者の大半は別の病院に転院したが、今も約20人が入院する。1月下旬から外来診療を再開。震災前の3割ほどに減ったものの1日に約150人が訪れる。

 他の医療機関からの看護師の応援を受け、何とか対応できているが、約120人いる看護師のうち約30人が退職の意向を示し、うち10人以上が退職届を出した。「断水が続いて生活拠点も確保できず、子育てを続けるのは難しい」「子どもが集中して学べる環境が整う金沢で職場を探したい」。退職理由には、そうした声が多いという。

 看護師の中には、道路の寸断で通勤が難しいなどの理由で、空き病棟で寝泊まりしながら働く人もいる。同病院の看護師の一人は「子育てしながら働く同僚は大変だと思う。これから病院がどうなるのか、不安もある」と口にした。

 珠洲市総合病院では約125人の看護師のうち22人が退職する見通しだ。石井和公事務局長(58)は「家を失った人も多く、目に見えない負担は相当ある」と説明する。複数の事務員や調理師も退職の意向を伝えているといい、「病院はチームワークで成り立っている。先が全く見通せず、患者数が増えたときに看護体制が厳しくなるかもしれない」という。(西崎啓太朗、佐藤道隆)

病床数8割減になる試算も

 県内の公立病院を管轄する県地域医療推進室は、看護師不足への危機感を募らせる。奥能登地域の4市町からなる「能登北部医療圏」は高齢化率が50%を超え、県内でも特に診療所の数が少ない地域だ。私立病院は1カ所だけで、公立とあわせた5病院が「本来は診療所が担うかかりつけ医の役割を果たし、地域になくてはならない存在」という。

 看護師の離職が続けば、風邪…

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    藤田直央
    (朝日新聞編集委員=政治、外交、憲法)
    2024年3月4日6時28分 投稿
    【視点】

    震災に見舞われた能登では衰退と復興がせめぎ合っている、と先日書きましたが、医療はその象徴です。地域医療の拠点としての公立病院が経営難で統廃合される動きは、過疎化が進む全国各地であります。そして能登では震災で公立病院の必要性が再認識されたにも

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    田渕紫織
    (朝日新聞社会部記者=メディア、子ども)
    2024年3月4日15時36分 投稿
    【視点】

    看護師というエッセンシャルワーカーの仕事を支えていたのは何かが、はっきりと浮かび上がります。 能登では中高生の集団避難に注目が集まりましたが、未就学児の保育環境もなかなか整わないままです。 現地で取材した際、保育園に預けられずながら

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