「国にはしごをはずされた」 再エネ出力制御急増 拡大の足かせに

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編集委員・石井徹 三浦惇平 安田朋起 市野塊
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 昨年12月31日、中国、四国地域を中心に25カ所の太陽光発電を展開する東洋生興(大阪府守口市)専務の前川正敏さん(51)のスマートフォンに、16通のメールが届いた。「明日、電気の供給が余剰になると見込まれるため、以下の発電所の出力制御を実施する予定があります」。中国電力四国電力の送配電会社からだった。

 前川さんは「大みそかにこんなメールが大量に来たらうんざりしますよ。正月から何やねん。先が思いやられる」とため息をつく。

 出力制御が急増したのは昨年だ。電力の供給が需要を上回る見込みになると、前日夕方に送配電会社から予告メールが届く。しかし、実際の制御量は直前の需給状況で決まるので、その時までわからない。このときも実際に抑制されたのは四国電力管内の5カ所だった。

 特に多かったのが3~6月で、10月にも発生した。同社が持つ鳥取県米子市の発電所(1600キロワット)は3~6月の出力制御が21回、計約100時間に及んだ。

 太陽光と風力による発電を一時的に止める「出力制御」が2023年に急増し、1年間に制御された電力量が全国で計約19・2億㌔ワット時に達したことが朝日新聞の集計でわかった。過去最多だった21年の3倍超で、約45万世帯分の年間消費電力量に相当する。現場では何が起きていたのか。

 長い時には、制御が午前8時ごろから午後4時ごろまで8時間以上に及ぶ日もあり、ほとんど稼働しないに等しい。25カ所全体(出力計1万4500キロワット)の年間売電収入は、想定より約900万円減った。

 「今年は中国エリアで出力制御がさらに増えるのではないか」と心配する。8月には島根原発2号機(松江市)の再稼働が予定されているからだ。これ以上増えれば、売電収入が建設時の借入金返済額を下回る事態も想定される。業界では「出力制御倒産」が広がるおそれもうわさされているという。

「前向きな未来描けない」

 前川さんは「再エネ拡大は国…

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    加谷珪一
    (経済評論家)
    2024年2月10日9時40分 投稿
    【解説】

    太陽光や風力は天候次第で出力過剰となることは最初から分かっていたことです。再エネの出力をうまく管理するためには、需要に合わせて各地に電力を再配分できる高度な送電網や、電力を一時的に貯める蓄電システムなどの整備を同時並行で進めていかなければな

    …続きを読む