がん治療などの情報をインターネットで検索すると、健康食品や民間療法を紹介するサイトや動画に行き当たることがあります。「補完代替療法(医療)」や「統合医療」と呼ばれるこうした療法とどう付き合えば良いのか。この分野に詳しい島根大医学部付属病院臨床研究センターの大野智教授に話を聞きました。
健康被害がある可能性も
――補完代替療法は、マッサージや鍼灸(しんきゅう)、ヨガなども含み非常に多様ですが、がん治療では健康食品が多く話題になります。気をつける点は?
まず、健康被害があるかもしれない、ということです。
「健康食品は薬ではなく食品であり、天然由来成分だから、副作用のようなマイナス面はない」と思う人もいるようですが、そうでもない。じんましんや下痢などの症状が出ることもあるし、肝臓など内臓に影響することもあるのです。
さらに、治療中の人は病院で出された薬の副作用を強めたり、逆に作用をなくしてしまったりという可能性もある。だからこそ飲んでよいかどうか、主治医に相談してほしいです。
実際、健康食品については内閣府食品安全委員会が以前から繰り返し「天然・自然・ナチュラルだから安全、ではない」と呼びかけています。サプリメントの過剰摂取への注意なども伝えています。国民生活センターも「健康食品の危害」について情報を発信しています。
高額、解約できない…経済的負担の問題
――2点目はなんでしょう。
経済被害、つまり高額すぎたり、解約できなかったりという例です。国民生活センターに寄せられる事例は、健康被害が出たので解約したいが応じてくれないとか、高額な解約料を請求されたとかいうものが多くあります。保険が効きませんし、継続するものも多いですから「経済的な負担」を感じる人も多いです。
人間には「高額なものほど良いもの」という認知バイアスがあります。いわゆる栄養ドリンクも、高い方が効くと思いがちですよね。「これだけ払ったんだから、きっと良いことがある」と信じるのは分かるのですが、本当にその価格に見合う価値があるか、冷静に考えてほしいです。
そもそもマーケティングの観…