ハマスに襲われたキブツ 家は壊され、逃れたシェルターも焼かれた

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イスラエル南部キブツ・ベエリ=高久潤
【動画】ハマスの急襲を受けたイスラエル南部キブツ・ベエリ=高久潤撮影

 植栽の向こうに、庭付きの低層住宅が肩を寄せ合うように集まる。秋でもときおり強く照りつけるイスラエルの日差しに目を細めながら集落を望むと、まだ人が住んでいるのではないか、と錯覚した。目に入った緑が、あまりにも青々としていたせいだろう。

 20日、イスラエル軍が一部メディアにパレスチナ自治区ガザ地区との境界から東に約5キロのキブツ・ベエリを公開した。ガザのイスラム組織ハマスの急襲で、初めに犠牲になった集落の一つだ。人口の約1割にあたる100人以上が殺害され、また多くが人質として連れ去られた。

 集落に近づくと、襲撃から2週間がたったにもかかわらず、焦げたような臭いが鼻をつく。異様だ。

 中に足を踏み入れると、家々の壁や窓ガラスに無数の弾痕や砲撃の跡が残されている。ハマスの戦闘員が使用した爆弾や放火により、屋根が剝がれ落ちたり、外壁しか残っていなかったりする状態の家もある。

 3歳ほどの子どものものとみられるおもちゃの車、片方だけの運動靴、歩道に転がったステンレス製の片手鍋……。歩みを進めると、人々が暮らしていた息づかいを伝えるさまざまなものが、視界に入る。ただ、脈絡がない。荒らされて室内外にばらまかれているからだ。

 ある家の居間はほとんど原形をとどめておらず、五つのマットレスだけが残されていた。

 襲撃が始まった7日早朝、イスラエルではユダヤ教の祝日で連休中だった。家族で集まって過ごしていたのかもしれない。付近には大量の血しぶきで黒くなった布団が打ち捨てられていた。日常を壊した戦闘員の残忍さを物語る。

 あの日、この集落で何が起きたのか。

遺体のほとんどに拷問の痕

 イスラエル軍によると、7日…

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この記事を書いた人
高久潤
エルサレム支局長
専門・関心分野
グローバリゼーション、民主主義、文化、芸術
イスラエル・パレスチナ問題

イスラエル・パレスチナ問題

イスラム組織ハマスが2023年10月7日、イスラエルに大規模攻撃を行いました。イスラエルは報復としてハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザ地区に攻撃を始めました。最新のニュースや解説をお届けします。[もっと見る]