「のぞみ」もっと徳山駅に! 停車大幅減で山口・周南市など熱烈要望

三沢敦
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 「のぞみ」を元のように増やして――。3月のダイヤ改定で、JR徳山駅に停車する新幹線「のぞみ」の本数が上りと下りをあわせて15本から9本へと大幅に減ったことを受け、周南地域の自治体や経済界が停車増を求める要望に力を入れている。沿岸部にコンビナートが広がる同地域には東京などに本社がある企業が数多く立地する。「首都圏と直結したのぞみの需要は非常に高い」と訴えている。

 「コンビナートの皆さん、市民にとっても大変不便。最初は2本しか止まらなかったのを徐々に増やしてもらって15本になった。逆行してしまうのは本当に困る。ぜひもう一度ダイヤを元に戻してほしい」

 9月26日に周南市役所であった定例記者会見。藤井律子市長はJR徳山駅に「のぞみ」が停車することの重要性を改めて訴え、引き続き要望活動に力を入れる考えを示した。

 藤井市長が中心となり、停車増を求める要望書をJR西日本に提出したのは8月28日のことだ。要望書は周南、下松、光の3市の市長と市議会議長、商工会議所会頭の連名で、産業が集積する周南地域では「主要都市と直接つながる新幹線は非常に利便性が高く……特に、首都圏と直結し、速達性の高い『のぞみ』への需要が非常に高い」と強調。事業者からの要望が多い午前6、7時台発と午後9、10時台着の増便を求めた。

 上下線合わせて15本あった「のぞみ」の停車数が9本に減ったのは3月18日のダイヤ改定から。昨年末にJR西日本が発表すると、「企業活動や誘致に影響が出る」と周南市議会が問題視した。改定に先立ち、「停車本数増」を求める決議をいち早く可決。多くの企業が立地する下松市や光市などの周辺自治体や経済界を巻き込んだ行動を市に促し、8月の要望につながった。

 製造品出荷額や加工賃収入額が県内の3分の1を占める周南地域。東ソーや出光興産など東京に本社を置く事業所も少なくない。一方で岩国錦帯橋空港や山口宇部空港とはいずれも50キロほど離れ、首都圏との交通手段に新幹線を選ぶ人が大半だ。

 コンビナートに立地する企業に勤める市内の男性(50)は「疲れた仕事帰りは乗り換えせずに戻りたい。本数が減って利用しづらくなった」とこぼす。首都圏への出張から戻る際、午後8時から9時台に徳山駅に到着する便をよく使っていた。だが、改定後は午後7時46分着以降は11時8分着しかない。「早く家に帰るために広島駅こだまに乗り換えますが、仕事疲れでぼーっとして乗り換えを忘れ、小倉駅まで行ってしまったこともある」と明かす。

 県の統計年鑑によると、2021年度の山陽新幹線の県内の駅別乗車人員は徳山駅が196万2千人と最多で、新山口駅が183万5千人と続く。だが、3月の改定では、徳山駅停車の「のぞみ」が減る一方で、新山口駅停車の「のぞみ」は6本増えて計29本に。

 逆に、鹿児島中央駅と新大阪駅を結ぶ「さくら」は、徳山駅停車が9本増の計20本、新山口駅停車が9本減の14本となった。停車する主要列車を駅ごとに使い分け、新山口駅では「のぞみ」、徳山駅では「さくら」を増やした形だ。JR西日本中国統括本部広報は「(ひかりやこだまを含む)新幹線の1日の停車本数は徳山駅が3本増え、新山口駅が3本減っている」と説明する。

 しかし、利用客や企業を対象に市と圏域の4商工会議所がそれぞれ実施したアンケートによると、「『のぞみ』が減少し不便になった」と答えたのは、利用客が53・5%、企業が72%にも上る。「『さくら』が増加し便利になった」という回答は、利用客が11・5%、企業が6%にとどまった。また利用客の58・6%、企業の77%が「『のぞみ』を増やしてほしい」と希望した。

 周南市はこれまで「のぞみが停車するまち」を企業誘致や首都圏からの移住のセールスポイントにしてきた経緯もある。まちなか再生の切り札として18年に開館した市立駅前図書館や、連動して整備が進む駅前再開発も「のぞみ」の停車を前提にしてきた。

 地域を挙げた熱烈な要望はどう響くのか。周南市によると、要望書を受け取ったJR西日本の広岡研二・広島支社長は非公開の意見交換で「今後、ニーズを把握して検討していきたい」と答えたという。(三沢敦)

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