トランス女性に「不平等」の恐れも 性別変更の要件、最高裁どう判断

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二階堂友紀
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 トランスジェンダーの人たちが戸籍上の性別を変えるには、生殖能力を失わせるなどの手術が必要――。そんな性同一性障害特例法の規定が憲法に違反するかを審理している最高裁大法廷は27日、当事者の意見を聞く弁論を開いた。年内にも見込まれる最高裁の判断次第では、トランス女性のみに手術の負担が残る恐れもあると、当事者や専門家は懸念する。決定を前に論点を整理した。

 今回の申立人は、戸籍上は男性だが、女性として生きるトランス女性。「女性として社会生活を送っている現実があるにもかかわらず、法律上は女性として取り扱われないというギャップがある」「性別のあり方を尊重するという基本的人権が侵害されている」。代理人弁護士はこの日、大法廷で15人の裁判官に訴えた。

 申立人が女性として生活しながらも、戸籍上の性別を変更できないのは、2004年に施行された性同一性障害特例法が「五つの要件」を定めているためだ。

 2人以上の医師が性同一性障害と診断している人で、①18歳以上②現在結婚していない③未成年の子がいない④生殖腺(卵巣や精巣)がない、またはその機能を永続的に欠いている⑤変更する性別の性器に似た外観を備えている――という要件をすべて満たしていれば、家裁が性別変更の申し立てを認める。

 このうち、生殖能力の喪失を求める④の「生殖不能要件」と、体の外に現れている外性器の外観を変えることを求める⑤の「外観要件」を満たすためには、原則として性別適合手術が必要だ。④と⑤をあわせて「手術要件」と呼ばれる。

 申立人は、性同一性障害の診断を受け、①~③の要件を満たしているが、生殖能力を失わせるなどの手術は受けていない。手術を経ずに性別変更を申し立て、手術要件の④と⑤について、「個人の尊重や幸福追求権を保障する憲法13条や、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しており、無効だ」と主張している。

 ④と⑤は、戸籍上の性別を変えるため、体にメスを入れることを強いるという意味では一体のものだ。性別変更の高いハードルになっており、「人権侵害だ」と指摘されている。就職や結婚のため、やむを得ず手術を受ける人も少なくない。

 最高裁がこうした点を重視し、④と⑤をいずれも「違憲」と判断すれば、性別変更に外科的な手術は不要になり、「トランスジェンダーの人権回復」は大きく前に進む。

トランス女性「救済されない」懸念

 ただ、最高裁が④と⑤の両方を正面から判断するかについて、トランスジェンダー当事者や専門家の間には不安視する声もある。

 今回の申し立てでは、一審に…

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