「らんまん」の東大植物園、もう限界 れんが崩落、空調まさかの手動

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渡辺芳枝
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 NHK連続テレビ小説「らんまん」の舞台となっている研究施設が、深刻な老朽化にあえいでいる。約80万点に上る植物標本の収蔵環境は限界で、研究者たちが困り果てている。

 東京都文京区にある東京大学大学院理学系研究科付属植物園、通称・小石川植物園。「らんまん」の最終回が近づき、平日も多くの来園者でにぎわっている。

 主人公のモデルとなった植物学者、牧野富太郎が見つけた「新種」などの植物標本を有する日本最高峰の研究施設だ。

 1939年竣工(しゅんこう)の本館(一般には非公開)に入った。「東京大学植物標本室」の看板がかかった扉を開けると、事務用ロッカーが所狭しと並ぶ。中にはぎっしりと標本が重ねられている。

 牧野が「新種」と気付き、1889年に日本人として初めて国内で学名をつけて発表した植物「ヤマトグサ」の実際の標本も、この中に収められていた。

 同園のタヴァレス・ヴァスケス・ジエーゴ特任助教(36)は「もう満杯で、ギュウギュウに入っているから、取り出すたびに台紙が傷む。限界を超えている」と嘆く。

 入りきらない標本は、段ボールに入れてロッカーの上に積んである。標本室だけでなく、屋根裏のような置き場所にも標本入りの段ボールが積み重なっている。

新設には20億円、「夢物語だ」

 「らんまん」では、日本各地…

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    佐倉統
    (東京大学大学院教授=科学技術社会論)
    2023年9月15日9時48分 投稿
    【視点】

    植物園を含めた博物館的な施設には、その国の文化水準が反映されている。文化資源を地道に保存・保管する役割は、華々しいポップカルチャーや "クールジャパン" のようにお金をたくさん稼ぐことはできないけれど、その国が今まで長年かけて蓄積してきた文

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年9月15日9時58分 投稿
    【視点】

    こんな句も。 緑蔭(りょくいん)を出れば明るし芥子(けし)は実に  髙浜虚子 1935年の虚子が小石川植物園で詠んだ句だ。青葉の茂った木立を抜けたときの眩しさのなか、芥子の花はもう散って芥子坊主(芥子の実)になっていた、と。

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