ウクライナ、国防相交代 ウメロウ氏の起用 ゼレンスキー氏の狙いは
ウクライナのゼレンスキー大統領は9月初め、ロシアによる侵攻開始前から国防相を務めてきたオレクシー・レズニコウ氏を解任し、後任に国有財産基金総裁のルステム・ウメロウ氏を起用する考えを明らかにし、6日に議会で承認されました。ウクライナが6月から反転攻勢を進める中、今回の国防相交代にはどんな狙いがあるのでしょうか。ユーラシア諸国の政治・外交が専門の津田塾大学・松嵜英也准教授(36)に聞きました。
――今回の国防相交代は、国防省が特定企業から相場よりはるかに高い価格で軍の食料などを購入していた汚職疑惑を受けての、レズニコウ氏の引責との見方があります。
確かに、ゼレンスキー氏が汚職対策を進める中、国防省の汚職に関するレズニコウ氏の監督責任は、国防相交代の一つの消極的な側面ではあると思います。もともとウクライナでは、ロシアによる侵攻以前から、政治とオリガルヒの癒着、政治と軍の恩顧主義など、汚職が生じる構造的な問題があります。
――国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル」が発表した昨年の「腐敗認識指数」では、ウクライナは180の国と地域のうち116位でした。
ウクライナにおける汚職の蔓延(まんえん)はEU加盟、NATO加盟に向けた大きな障害にもなっており、汚職撲滅のための構造改革はゼレンスキー氏が19年に大統領に就任して以来の政策の柱の一つです。欧米諸国からの支援の調達にも影響します。戦時中の国防省に関係する汚職に厳しく対応し、国内外に向けて汚職撲滅をアピールするという観点から、今回の人事を捉える見方はあると思います。
一方で、国防相交代の背景としては、「ぜひウメロウ氏を起用したい」というゼレンスキー氏の積極的な狙いの方が大きいのではないかと考えています。
――むしろ、ウメロウ氏を起用するための交代だということでしょうか。
レズニコウ氏には国防省の汚職に対する監督責任はありますが、汚職に直接関与したと事実認定されているわけではありません。汚職をめぐっては今年1月、国防省の副大臣が辞任するなどの対応がすでになされています。今回の交代は、クリミア半島に起源を持つ民族「クリミア・タタール人」として民族運動を展開してきたウメロウ氏を起用したいという積極的な狙いがあるのではないかと考えています。
戦時下のウクライナの「顔」の一つである国防相にウメロウ氏を起用することで、国内外に対してウクライナの民族的な多様性やロシアに屈しない姿勢を示し、反転攻勢を活性化させたいという、ゼレンスキー氏の思惑があるのではないでしょうか。
――クリミア・タタール人であるウメロウ氏の起用が、なぜ反転攻勢の活性化につながるのですか。
それを理解するには、まず…
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