軍の任務でイスラム教に入信 103歳が最後まで語らなかったこと

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編集委員・石橋英昭

 仙台市青葉区の丘の上の住宅街。その一角に、佐々木慶三さんはひとりで住んでいる。1920(大正9)年生まれ、103歳になる。

 戦時中に入信した日本人イスラム教徒の「最古老」がいると聞き、教えられた住所を探し訪ねたのは、5月のこと。

 佐々木さんは茶の間でじっと座っていた。耳が遠いのか、何度呼びかけても答えない。

 介護に通っている長男の広さん(72)が現れ、「もう会話は難しいと思いますよ」と告げた。

 佐々木さんは100歳を前にした4年前、「祈りの宗教イスラム教」と題する本を自費で出していた。イスラム教について詳しく解説した本の序文に、経歴の一端を記している。

インドネシア社会に入り込み、融和工作に従事

 数奇な人生だった。

 高等小学校を出て材木店で働いた後、18歳で軍属に採用され、中国・旧満州へ。日本軍が1942年、石油資源や労働力の確保を目的にオランダ領東インド(インドネシア)を占領すると、佐々木さんはスマトラ島メダン市に派遣された。

 航空機修理などを担った野戦…

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この記事を書いた人
石橋英昭
編集委員|仙台駐在
専門・関心分野
東日本大震災、在日外国人、戦争の記憶