京王線刺傷事件、被告に懲役23年の判決 東京地裁立川支部

宮脇稜平 田中恭太
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 東京都調布市内を走る京王線の電車内で2021年10月、乗客を刺し、車内に放火したなどとして、殺人未遂や現住建造物等放火などの罪に問われた無職服部恭太被告(26)の裁判員裁判の判決公判が31日、東京地裁立川支部(竹下雄裁判長)であった。判決は、「自分勝手な理由で、多数の乗客の生命を狙った無差別的な犯行」として、被告に懲役23年(求刑懲役25年)を言い渡した。

 判決によると、服部被告は21年10月31日午後7時55分から58分ごろ、調布(調布市)―国領(同)を走る特急電車内で、男性(当時72)の胸をナイフで突き刺して殺害しようとしたほか、車内にまいたライター用オイルに火の付いたライターを投げて放火し、近くの乗客10人を殺害しようとした。

一部の乗客への殺人未遂罪は認めず

 検察側は、放火による殺人未遂罪の被害者は乗客12人として起訴した。判決は、監視カメラの映像などから10人については、被告がライターを投げた時点で「生命侵害の現実的で具体的な危険性があった」と評価し、同罪の成立を認定。残る2人は危険な場所にいたと認めるには「合理的な疑いが残る」とし、罪の成立を否定した。

 一方で量刑を決めるにあたり、放火について「わずかな時間の違いで多くの死傷者が出てもおかしくない状況だった。凶悪で卑劣な犯行というほかない」と非難した。

小田急線の事件を参考に

 判決や公判での供述などによると、被告は元交際相手の結婚や、慣れ親しんだ職場から異動を命じられたことで自殺願望を抱いた。ただ、自殺は以前に失敗していたため、殺人事件を起こして死刑になろうと考え、「複数の人を殺害するしかない」と、無差別殺人を計画。当初は人が集まる渋谷での犯行を考えたが、21年8月に小田急線で起きた刺傷事件をきっかけに、電車内での放火殺人を計画したという。

 犯行当日はハロウィーンで、米国の人気映画シリーズ「バットマン」の悪役「ジョーカー」をまねた服装をしていた。この点について被告は公判で「(死刑になるために)殺人を犯さないといけないという思いがあった。ジョーカーを目標にすればいいんじゃないかと思った」と語った。

 判決後に会見した補充裁判員の40代男性は「気軽に何でも相談できる人がいなかったために、自分の考えだけで突っ走ってしまった印象を受けた。友人や家族とのつながりが強く、相談ができれば事件は起きなかったかなと思う」と話した。

 裁判員の男性(70)も「誰かが一緒にいて『死にたいほど悩んでいた』と打ち明けられていれば、事件は起きなかったのではないか」と話した。(宮脇稜平、田中恭太

「不安定な職」と無差別刺傷 裁判で見えた京王・小田急事件の共通点

2つの事件から見えた共通点は何か。傍聴した記者の取材に加え、識者にも読み解いてもらいます。

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