西側への期待と幻滅 東欧のメンタリティー、重なるウクライナの未来

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田島知樹

 まさに西側の一員としてのウクライナだった。

 G7広島サミット最終日。記念撮影のため西側の首脳らと並ぶゼレンスキー大統領を見て、テレビ越しにそう思った。

 ウクライナは負けてはならない。そしていつかくる戦後、自由を勝ち取り、民主主義を発展させていく。民主主義を信じる一人の人間として、私はそういうウクライナの未来を願った。

 だがそれは、並大抵のことではない。

 私はサミットの約2カ月前にしたインタビューを思い出していた。

 スラヴェンカ・ドラクリッチさん(73)。クロアチア出身の作家、ジャーナリストで東欧の人間の生き方やメンタリティーを見つめ続けてきた。

 約30年前、冷戦が終わり、東欧の人々は強権的な共産党の支配から解放された。自由と民主主義の西側に憧れ、西側を目指した。

 だが、ハンガリーやポーランドを筆頭に一部ではかつての体制に回帰しているように見える。

 西欧への憧れ。ドラクリッチさんによれば、それは東欧の人々が抱いた幻想だったという。そして、その先に待っていたのが幻滅と反動だった。

 「ウクライナも同様の経験をすることになるはずです」

 この言葉は、G7の盛り上がりの中、私の頭の中で響き続けていた。

東欧のメンタリティーとは何か。西側への期待はなぜ失望に変わるのか。東欧の歴史をひもときながら、ウクライナの未来も考えます。

 西側の魅力とは何だったのか…

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この記事を書いた人
田島知樹
文化部|文化庁担当
専門・関心分野
文化政策、国際政治、特に欧米の外交史
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    マライ・メントライン
    (よろず物書き業・翻訳家)
    2023年6月2日17時0分 投稿
    【視点】

    ここで論じられていることは、たとえばドイツ国内の「東西格差」問題の相似形でもある。至るところに同じような構図があり、特に冷戦終結以降、静かにストレスと怨念が蓄積しているように思えてならない。 ウクライナも元々「西につくか、東につくか」で世情

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  • commentatorHeader
    鈴木一人
    (東京大学大学院教授・地経学研究所長)
    2023年6月3日10時27分 投稿
    【解説】

    いろんなことを考えさせられる記事。かつてイタリア共産党の創設者であるアントニオ・グラムシは西欧の市民社会の強固さに基づく共産主義と、ゼラチン状の市民社会に基づくロシアの共産主義の違いを踏まえてレーニン批判をしたが(のちのユーロコミュニズムの

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