夫の怒りは「私の努力が足りないから」 モラハラが心をむしばむまで

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黒田早織

 「夫が怒るのは、私の努力が足りないから。ずっとそう思っていました」。兵庫県の30代女性は約5年間、会社員の夫から、モラハラ(モラルハラスメント)と言われる精神的DVを受けていた。

 それは、日常のささいなことにはさみ込まれた。

 長男(中3)を帝王切開で出産した直後、腹痛がひどく、医師に安静を命じられて体を休めていた。だが、帰宅した夫に「一日中寝てたん? なんで家事してないの?」と責められた。

最初はただの「ちょっとした小言」にも思える夫の言葉。気付かぬうちに女性の心をむしばむ、巧妙なモラハラの過程を追います。

 順調に昇進している夫に比べ、家で家事をしないのは甘えかもしれない。そう思い、翌日、女性は張ったおなかを抱えて風呂掃除をした。

 献立が気に入らないと、「お前の料理は焼いたんか炊いたんしかないんか」。子どもが風邪を引くと、「世話してんのか」。怒りのスイッチが入ると、説教は2~3時間続いた。

 何が夫の怒りを呼ぶのかわからず、機嫌次第だった。理由はささいなものだったため、「私がうまくやれなくて怒らせちゃっただけ」と思っていた。

 身体的な暴力はなく、説教後は優しかった。「DVってほどじゃない」と、親からDV相談窓口を勧められても断った。

エアコンをかけなかっただけなのに

 約10年前の夜風が涼しい夏…

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    中塚久美子
    (朝日新聞専門記者=子ども、貧困)
    2023年3月8日18時6分 投稿
    【視点】

     「壮絶な暴力を受けて事件化される被害女性は一部かもしれないが、言葉や態度による威圧を受ける精神的DVで苦しむ人はもっとたくさんいるのかもしれない」  普段は事件取材を担当している若手記者のそうした問題意識から、取材が始まった記事です。

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男女格差が主要先進国で最下位の日本。この社会で生きにくさを感じているのは、女性だけではありません。性別に関係なく平等に機会があり、だれもが「ありのままの自分」で生きられる社会をめざして。ジェンダー〈社会的・文化的に作られた性差〉について、一緒に考えませんか。[もっと見る]