ライチョウ 新年度は2家族の誕生を目標 那須どうぶつ王国

小野智美
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 【栃木】中央アルプス生まれの特別天然記念物ライチョウの雌雄2羽を預かる那須どうぶつ王国(那須町)は今年4月、両羽を動物園生まれの雌雄とつがいにして、2家族の誕生をめざす。今年は野生復帰はせず、個体を増やしてから来年実施する。

 約半世紀前に絶滅したとされる中央アルプスでの復活をめざす環境省が、3日に開いた保護増殖検討会で発表した。

 2021年夏、那須どうぶつ王国と茶臼山動物園長野市)は中央アルプスから野生のライチョウの家族を1家族ずつ預かり、繁殖に取り組んだ。那須どうぶつ王国で増やした3家族は昨年8月、国内初の日本産絶滅危惧種の野生復帰を果たした。

 那須どうぶつ王国が今年繁殖に取り組むライチョウのなかで特に注目されるのは、21年に中央アルプスから預かった雌だ。足輪の色で「黒」と呼ばれている。

 黒はストレスに弱い。3日の検討会で、産卵前の一時期、黒にはストレスを受けた際に出るホルモンの高分泌があったことが報告された。その状態で生まれた卵は孵化(ふか)率が下がる。

 同園は「現在は担当者の手から餌を食べるなど人に慣れているが、繁殖期は最低限の干渉にとどめ、ストレスになりえる物音などに注意する」と伝えた。

 検討会で、黒は「来年の野生復帰の主力」とも呼ばれた。野生のライチョウは母鳥のフンを食べることで、餌となる高山植物の消化に必要な腸内細菌を受け取っているからだ。

 検討会では、野生下と同じように季節に応じた高山植物を餌にすることの大切さが強調された。同園では今冬から新たに、那須連山で採取したダケカンバの冬芽、乗鞍岳のハイマツの種を与えている。同園のライチョウプロジェクトのリーダーを務める原藤芽衣獣医師は「卵の質の向上にも餌は大事」と話す。

 昨年の繁殖で、高山植物を食べて屋外放飼場で太陽を浴びていた黒たちが産んだ卵は、高山植物を食べず屋内だけで育った他のライチョウの卵と違い、分厚さを感じさせた。厚ければ感染症の予防効果が高まる。

 原藤さんは今年の繁殖に向けて「野生の強さに望みをかけたい。黒が飼育下に長くいることで野生の強さが薄れてしまっていなければいいなと願っています」と話した。(小野智美)

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