実は出生率の低下が続くフランス 「N分N乗」は少子化対策に有効?
少子化対策として、子どもが多い世帯ほど所得税が軽くなる「N分N乗」方式が注目されている。
フランスがかつての戦争で減った人口を増やそうと、1946年に始めた制度だ。先進国のなかでも出生率が高く、少子化対策に成功しているというフランスのイメージから、日本では「画期的な制度」との意見もある。
だが、過去約30年のフランスの出生率を見ると、90年代から2000年代にかけて回復した後、2010年をピークに低下を続けている。その背景には何があるのか。「N分N乗」は少子化対策に本当に有効なのだろうか。
「歴史的な人口の減少」。仏紙フィガロは1月18日、フランスの国立統計経済研究所(INSEE)が発表した22年の出生率をこんな見出しで伝えた。
INSEEによると、フランスで昨年生まれた新生児は72万3千人。21年と比べて1万9千人減った。1946年以来、最も少ない数で、歴史的な低水準を記録した。
人口は6800万人で前年から0.3%増えたが、年間の出生数が死亡数を上回る「自然増」が5万6千人だったのに対して、移民による人口増は16万1千人で、増加した人口の4分の3が移民によるものだった。
新生児の出生数の減少にあわせて、女性が一生に生む子の数を示す合計特殊出生率は1.80まで下がった。コロナ禍の影響があったとみられる21年を除いて、14年から下がり続けており、2.03だった10年と比べると低下傾向が鮮明になっている。
それでも、21年の日本の1.30に比べると依然として高い数値を維持していることに変わりない。欧州連合(EU)内でも最も高い水準にあるが、30年には死亡数が出生数を上回ると予測され、政府による対策の不十分さを指摘する声もある。
日本で注目されている所得税の「N分N乗」方式がフランスで導入された背景には、子育て世帯を優遇することで第2次世界大戦で減った人口を回復させる目的があった。
「N分N乗」方式は少子化対策の切り札になるのか。家族問題に関する調査研究を実施し、政策への反映を政府に働きかけているフランスの全国家族協会連合(UNAF)を訪ねた。
「特効薬ではありません」
経済・雇用を担当するイボン…
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