「入札を有名無実化し…」電通幹部出席の会議資料に明記 五輪談合
東京五輪・パラリンピックの運営業務をめぐる談合事件で、大会組織委員会による発注が始まる2年前の2016年、広告最大手「電通」の社内会議で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記した資料が共有されていたことが、関係者への取材で分かった。東京地検特捜部はこの資料を入手しており、こうした考えが、電通が談合を主導した背景にあったとみて調べている。
電通広報部は「回答は控える」とした。
事件では、組織委大会運営局の元次長・森泰夫容疑者(55)と電通スポーツ局の元局長補・逸見(へんみ)晃治容疑者(55)らが、組織委が18年5月以降に発注した各競技のテスト大会や本大会の運営業務について、会場ごとの受注予定業者を事前に決めたとして、独占禁止法違反(不当な取引制限)の疑いで逮捕された。契約金は400億円規模だった。
関係者によると、電通から組織委に出向中の幹部職員が16年、大会運営業務の発注見通しなどについて情報共有する会議の開催を、電通本体の五輪担当者らに呼びかけた。この幹部職員が作成し、電通社内の会議で示したプレゼン資料には、発注形式が入札になる想定で「入札を有名無実化して電通の利益の最大化を図る」などと記されていた。会議には逸見元局長補を含む幹部らが出席したという。
電通への報酬、50億円の削減要求で…
一方、17年になると、電通は組織委の上層部から、スポンサー獲得業務を担う「マーケティング専任代理店」としての電通への報酬を、経費削減の一環で50億円ほど減らしたいと言われたという。
電通は、自社への報酬削減は難しいが、その代わりに大会運営業務の委託で経費を削減できるなどと説明。電通社員で構成する対策事務局を組織委内に設け、競技ごとに運営実績のある業者に効率的に割り振って委託費を安く抑えるなどという提案書を提出した。ただ、組織委側は、電通にサポートは求めるが、全て任せるこの提案を受け入れなかったという。
その後、電通は組織委側と連携する形で各社の意向を確認し、受注候補をまとめた一覧表を更新した。特捜部は18年2~7月の事前調整を談合容疑とした。
18年3月には森元次長から表を見せられた組織委の上司が「電通が多い」「電通びいきの入札条件だと批判される」と指摘した。このため、電通の受注予定件数が減らされたという。
最初に発注されたテスト大会の計画立案業務は会場ごとに26件の入札があり、電通は最多タイの5件を落札した。落札結果は一覧表とほぼ一致したという。
特捜部は、自社への利益誘導や業界の調整を図る電通の姿勢が談合につながったとみて調べている。
一方、電通関係者は取材に、プレゼン資料の存在を認めたうえで「一社員の将来的な漠然とした思いで、結果として利益の最大化にもなっていない」と説明した。電通広報部は「当局の捜査・調査に支障をきたす可能性があり、回答は控える」とした。
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