同性婚で「社会は変わらない」 米特使が見た、唯一もたらす影響とは

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聞き手・多鹿ちなみ
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 性的少数者同性婚について、首相秘書官(当時)の「見るのもいやだ」という発言や、岸田文雄首相が「社会が変わってしまう」と話したことが、波紋を広げています。同性婚や、婚姻と同等の権利を保障するシビル・パートナーシップ制度が主要7カ国(G7)で唯一、国レベルで導入されていない日本は、どう見えているのか。世界におけるトランスジェンダーやそのほかのLGBTQI+(LGBTを含めた多様な性)の人たちの人権擁護に取り組んでいるジェシカ・スターン米特使が来日したのを機に聞きました。

米国が歩んできた50年、学んだことは

LGBTQI+の人たちの人権擁護のため、長い戦いを続けてきた米国。記事後半では、差別がどんな弊害をもたらすのか、なくすためにはどうしたらよいかについて語ってもらいました。

「すでに、地域の一員なのです」

 ――首相秘書官の「見るのもいやだ」という発言や、岸田首相の「社会が変わってしまう」という発言を聞いたとき、どう感じましたか?

 LGBTQI+の人たちの人権擁護に25年以上、取り組んでいますが、すべてこれまで聞いてきたことです。そのたびに私は、何度も何度も同じコンセプトに立ち返ります。私たち誰もが、LGBTQI+の人たちを知っています。私たち誰もが、隣人としてLGBTQI+の人たちと一緒に学校や職場に行ったことがあります。彼らはすでに、地域の一員なのです。

 これは、新しいコンセプトではありません。LGBTQI+の人たちが家族の一員だからといって、家族の基本的な構造が変わるわけではありません。また、「法の下の平等」以上に基本的なことはないので、すべての人の権利を認めるという社会の基本的な構造を変えることもできません。

 この議論は、LGBTQI+の人たちに限った話ではありません。女性について、障害のある人について、民族的・人種的マイノリティーについての話でもあります。誰もが経済に参加し、学校に行き、差別されることなく暮らす権利があるはずです。

 私が2月上旬に日本を訪問した際、本当に鼓舞されたのは、日本全国で200以上の自治体が何らかの形で同性婚を支持していて、65%以上の日本人が同性婚を認めることを支持しているということを知ったことです。つまり、LGBTQI+の人たちは社会的にはすでに、高いレベルで受け入れられているのです。

 ――一方で、日本はG7の中で唯一、同性婚やシビル・パートナーシップ制度が国レベルで導入されていません。現在の日本の状況をどう見ていますか?

 日本は現在、LGBTQI+の人たちの歴史的な不可視性に挑み、すべての日本人が保護されるための国政論争が行われています。政府にはすべての人を守る義務があり、それが本質的な姿勢です。

 日本における議論で私が強調したいのは、LGBTQI+の人たちはどんな場所においても、差別から解放されなければならないということです。終止符を打つべきです。

 今年は日本にとって、とても重要な年です。国連安全保障理事会非常任理事国であり、G7の議長国でもあります。

 G7は日本にとってとても近しい国で構成されていますが、日本には他のG7メンバーと異なり、LGBTQI+の人たちを差別から守る制度がありません。婚姻における平等もなく、トランスジェンダーの人たちの権利が尊重されない現在の仕組みは時代遅れです。

同性婚の「神話」と「データ」

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