NZの同性婚法制化10年 社会は変わらず、政治家の意識が変わった
同性婚を法律で認めることをめぐり、岸田文雄首相は「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と言った。
10年前、アジア・太平洋の国として初めて同性婚を法制化したニュージーランドでも、同じような懸念があったという。
だが、それから10年たっても「社会は変わらなかった」と、当時の国会議員は言う。むしろ変わったのは、反対票を投じた政治家たちの意識だと。
この元議員は、モーリス・ウィリアムソンさん(71)。当時の議会での演説が日本で再び注目を集めるなか、オンラインで話を聞いた。
日本の政治家へのメッセージ
記事後半では、同性婚を法制化しても「世界はそのままであり続けた」こと、その経験に基づく日本の政治家へのメッセージをウィリアムソンさんが語ります。10年前の議会演説の要旨も末尾につけています。
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2013年4月17日。
ニュージーランドの議会でこの日、同性婚を認める法案が可決された。賛成77、反対44。アジア・太平洋の国としては初めてのことだった。
その前日、9期目のベテラン議員だったウィリアムソンさんは、国会の最終審議で4分間の演説をした。選挙区内の有力者から、脅しにも似た猛反発を受けていることを笑い話にし、「社会構造が変わるのでは」という懸念にも理解を示した。
「核戦争を宣言するわけではない」
そのうえで、こう断じた。
「この法案によって私たちがしようとしていることは、愛し合う2人の人間が、結婚という形で認められるようにすることです。私たちがしようとしていることは、たったそれだけのことなんです」
「外国に対して核戦争を宣言するわけではない。私たちの農業を永遠に駆逐してしまうようなウイルスを持ち込むわけでもない」
終盤には、こう力を込めた。
「いまこの瞬間、この法案に反対している人たちに対しては、こう約束します。明日も太陽は昇ります」
あなたにとっての世界は、あなたの人生は、これからも、これまで通りに続いていく――。そうした訴えは広く共感を呼び、本人によると、「29カ国語に訳された」という。
日本語もその一つだった。この10年間、ウィリアムソンさんの演説の動画はたびたび話題になった。「LGBT理解増進法案」が本格議論された21年には、毎日新聞やバズフィードからインタビューを受けた。
首相秘書官の発言「極めて不快」
だが、日本ではいまも同性婚の法制化は実現していない。それどころか、今月、首相秘書官が「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」「秘書官室もみんな反対する」「同性婚を認めたら国を捨てる人が出てくる」などと報道陣に発言し、更迭された。
ウィリアムソンさんはこの首相秘書官の発言について、「ただただ、極めて不快」(just disgusting)、「まったくもってみっともない」(absolutely disgraceful)、「口にするのはすごく恥ずかしいと思うべきだ」(should actually be highly embarrassed)と強い言葉で非難した。
「同性愛について最も重要な…
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