北陸新幹線延伸、調査の「前倒し」発言に地元・京都の反応は

原田達矢 河原田慎一
[PR]

 北陸新幹線の敦賀から新大阪への延伸をめぐり、国土交通省環境影響評価(アセスメント)の遅れなどにより2023年度初めの着工が難しいと明らかにしたことについて、西脇隆俊京都府知事は16日の記者会見で、「施工上の課題や環境の保全について、国は適切に対応してほしい」と述べた。

 延伸工事を行う「鉄道建設・運輸施設整備支援機構」(横浜市)は、南丹市から京都駅を通って松井山手駅(京田辺市)周辺を通るルートを「事業実施区域」として示している。大半は地中深くのトンネルが、府内を南北に貫くことになる。環境破壊や地下水への影響を懸念し、府内の一部地域の住民が反対を表明。計画認可手続きに必要なアセスメントが進んでいない。

 これまで、与党の「整備新幹線建設推進プロジェクトチーム(PT)」や、関係自治体が、来年度初めの着工を国に求めてきた。だが14日に開かれたPTの会合で、国交省は着工時期が遅れる見通しだと初めて認めた。PT委員長の高木毅衆院議員(自民)は会合後、地下水への影響など、計画認可後に実施する調査を、認可前から実施するよう国に求めていく考えを示した。

 こうした「前倒し」で調査を進める考えに対し、計画に反対する住民は怒りの声を上げた。市民団体「市民環境研究所」の石田紀郎代表は「アセスも終わらず、法的な手続きが整ってもいないのに着工だ、調査だというのは、市民を馬鹿にした発言だ」。南丹市でアセスの受け入れを拒否している田歌地区元地区長の鞆(とも)岡誠さんは「この延伸計画は、どこを取っても何もいいところがない。(着工の遅れは)世論の高まりが追い込んだ成果。今後も手を緩めず、計画の不条理さを追及していく」と語った。

 西脇知事は、こうした調査の前倒しについて「国や機構から説明を受けていない」と述べた。その上で、「どのような調査が行われるにしても、環境アセスが終わっておらず、認可も行われていない。地元の理解を得ることが早期整備につながる。調査がどのように行われるか注視していく」と話した。

 京都市門川大作市長は「まずは自然環境や生活環境への影響ができるかぎり回避されるよう、着実に環境影響評価手続きを進めて頂くとともに、施工上の諸課題をしっかり見据え、それらの克服に向けた取り組みを検討して頂きたい」とするコメントを出した。

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【春トクキャンペーン】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

この記事を書いた人
原田達矢
ネットワーク報道本部|大阪市政担当
専門・関心分野
国内政治、地方創生、合唱
河原田慎一
ネットワーク報道本部
専門・関心分野
公共交通、イタリア文化、音楽