百里基地で初の昼夜連続訓練 「騒音が心配」常態化懸念する住民も

西崎啓太朗
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 航空自衛隊百里基地茨城県小美玉市)で先月27~28日、F2戦闘機を使った昼夜連続の飛行訓練があった。騒音への懸念から、市は事前に深夜や未明の訓練はしないよう求めていた。実際の訓練はどうだったのか。基地周辺を歩き、尋ねた。

 市が把握している限りでは、深夜、未明を含む昼夜連続の飛行訓練は初めてのことだった。

 島田幸三市長は10月26日、同基地の石村尚久司令に午後8時以降の訓練を控えるように求めた。その際、司令は「午後10時~午前6時に戦闘機の離陸はしない」と回答したという。

 27日の訓練では、午後10時近くまで、F2戦闘機の離陸が続いた。

 市や基地周辺住民の話では、午後7時半ごろに約8機、午後9時45分ごろに約4機の戦闘機が離陸した。各戦闘機はその後、太平洋上に向かい、1~2時間後に基地に着陸したとみられる。27日午後10時~28日午前6時ごろの離陸は確認されなかった。

 訓練後、31日時点で住民から市に苦情は寄せられていない。ただ、訓練の常態化を懸念する住民もいる。

 基地の滑走路から1キロ以内に住む梅沢優(まさる)さん(72)もその一人だ。31日午後、基地の誘導路そばの展望台から、F2戦闘機の離陸を見つめていた。

 誘導路は「く」の字に曲がっている。基地建設に反対し、農地の売り渡しを拒否した人たちの土地を避けるためだ。梅沢さんら反対派の住民が、この土地に展望台をつくった。

 F2が滑走路を一気に加速すると、低い爆音がとどろき、大人数で黒板をひっかいたような高い音が入りまじった。梅沢さんも思わず体をのけぞらせた。

 会話が聞こえなくなった。数秒後、F2は空のかなたを飛んでいた。それでも爆音は残り続けた。戦闘機の機影を追えなくなってようやく、梅沢さんはつぶやいた。「騒音には慣れているつもりだけど、衝撃音が大きいF2の離陸音は耳に残って嫌な気分になる」

 梅沢さんは訓練があった27日夜、自宅にいた。「着陸時の音は気にならなかったが、周りが静かな夜は、より離陸音が響く気がした」と振り返る。

 以前から、深夜にF2やF4ファントム戦闘機などの緊急発進スクランブル)があった。夜中に何十回もたたき起こされたという。「なし崩しに夜間訓練ができる基地にしようとしているのでは。早朝から農作業をする住民も多く、騒音でよく眠れなくなるのが心配だ」

 一方、基地周辺の行政区長でつくる百里飛行場周辺整備協議会顧問で、滑走路から約1キロの集落に住む長島洋治さん(74)は、27日午後9時ごろに就寝したが、離陸音で目が覚めることはなかった。「夢の中で分からなかった。基地は首都圏防衛のための重要な施設。夜10時まで訓練が続いても影響はないのでは」と語る。

 市基地対策課の担当者は「今回は申し入れに一定の配慮をしてもらったが、深夜や未明、午後10時までの飛行訓練が続くような事態になれば、さらなる申し入れを考えなければいけない」と話す。一方、同基地は、今後について「飛行の運用にかかわることなので、コメントは差し控える」と述べている。

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この記事を書いた人
西崎啓太朗
ネットワーク報道本部|大阪駐在
専門・関心分野
移民、難民、宗教、災害、中東地域