挑んだ「テツの天井」、葛藤とつなげる思い 私は今もホームにいます

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高絢実

 10月初旬の平日早朝、JR名古屋駅のホーム。黒い髪をぴしっと一つにまとめた制服姿の女性が、背筋をまっすぐに中央線の車両を指さす。車体の前面に異常がないことを確認し、声に出した。

 「在姿状態、オーライ」

 JR東海の運転士・安井翠さん(35)は、運転席の設備も点検し、中津川駅に向けて列車を出発させた。

 ホームの決められた位置での停車のためにスピードを落とし始める地点は、担当する40駅分を記憶。駅間ごとの線路の形状や車両ごとのブレーキの利き具合も異なるが、すべて把握している。時間通り正確で、「ガタン」と大きな揺れを抑えた緩やかな運転をするのがこだわりだ。

 鉄道開業から14日で150年を迎えました。長く男性が占めていた現場に今、多くの女性が立っています。女性の運輸職の採用が始まって25年。「ガラスの天井」ならぬ「テツの天井」に挑んだ彼女たちの歩みを取材しました。

志望動機は「定時運行」

 千葉県出身。都内の大学に電…

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この記事を書いた人
高絢実
くらし報道部|社会保障担当
専門・関心分野
外国人、在日コリアン、社会保障全般
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    伊木緑
    (朝日新聞記者=スポーツ、ジェンダー)
    2022年10月15日7時18分 投稿
    【視点】

    「ぼくのママはうんてんし」(福音館書店)という本を思い出しました。初版は10年前。図書館で初めて目にした時、感慨深かったです。まだまだお目にかかる機会が少ない女性の運転士。運転士は男性ばかりではないということが電車大好きの4歳男児の印象に残

    …続きを読む