第1回ドラマ「白線流し」で生まれた駅の名シーン 亡き脚本家が込めた思い

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 ホームの端から端まで90歩。50メートル間隔ほどの踏切の音が、徐々に大きくなり、信州の山々に響き渡る。

 長野県松本市のアルピコ交通上高地線「新村(にいむら)駅」。

 ここで、ドラマ「白線流し」の名シーンが生まれた。

 「白線流し」は進学校に通う高校生と、定時制、保護観察中の男女7人の青春を描いたドラマ。1996年にフジテレビ系で放送された。

 全日制の進学校に通う高校3年生の七倉園子(酒井美紀さん)は、打ちひしがれながら下り線に乗っていた。勇気を振り絞り、定時制に通う大河内渉(長瀬智也さん)宛てのラブレターを書いたが、指定した待ち合わせ場所に渉はいない。その帰路だった。

 単線の上高地線は、新村駅で上下線が待ち合わせをする。反対車線の上り線の扉が閉まろうとしていたとき、ふと顔を上げた園子の目に映ったのは渉の姿。思わず下車し、走り出した電車を追いかける。そして……。

 「進学校である全日制の生徒たちが下校した後、入れ替わるように、仕事が終わって登校してくる苦学生の定時制夜間部の生徒たち。この構造を可視化するため、上下線の交差を小道具的に使いました」

 プロデューサーだった本間欧彦さん(64)=現・北海道文化放送特任参与=は振り返る。

 ドラマでは、このシーンだけでなく、何度も新村駅が使われた。

 まだ知り合いでなかった園子と渉が、上下線ですれ違う。仲良くなった2人が、新村駅で待ち合わせ、駅のベンチで語り合う。

 上高地線は、「白線流し」になくてはならないキャストとなっていった。

「白線流し」のロケ地となった新村駅。この駅が選ばれた理由や、ドラマと鉄道の重要な関係、昨年亡くなった脚本家の思いについて語ってもらっています。さらに、本間さんはドラマ「東京ラブストーリー」の演出も務めており、あの名場面の撮影の裏側も教えてもらいました。

 なぜ、長野県の一部だけを走る上高地線、そして新村駅がロケ地として選ばれたのか。

 本間さんによると、理由は三つあった。

①単線で上下線が待ち合わせする

②清涼でピュアな風景が撮影で…

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    村瀬信也
    (朝日新聞記者=文化、将棋)
    2022年10月14日19時30分 投稿
    【視点】

    ドラマ「白線流し」の舞台になった長野県松本市。私もロケ地の取材に行ったことがあります。主人公たちが通う「松本北高校」のモデルとなった松商学園高校に足を運び、主人公の同級生の自宅として登場した「尾上の湯旅館」に泊まりました。市内を流れる薄川を

    …続きを読む