よみがえる昭和の響き 整備士がつなぐ、キハ205エンジンの鼓動
「整備したこのエンジンがきれいに回って、軽やかな良い音が聞ける瞬間が何よりの喜び」
車両基地で整備中の「キハ205」を案内しながら、冨成裕嗣(ひろつぐ)さん(48)はそう言って、油やほこりで汚れた顔をほころばせた。
停車中のアイドリング時、シリンダーで燃焼(爆発)する音が奏でる「カランカラン」という軽やかな響き、エンジンを吹かした時の大迫力の轟音(ごうおん)。
キハ205のエンジンが作りだす音色は、鉄道ファンのみならず、かつて日本中の鉄路を走っていた当時の風景をよみがえらせ、人の心をひきつける。
これまでに1千両以上が作られた「キハ20系気動車」。かつては旧国鉄を中心に日本各地の鉄路を走る姿が見られたが、令和の今、走行可能な同型車両は水島臨海鉄道(岡山県倉敷市)とひたちなか海浜鉄道(茨城県ひたちなか市)で走る2両のみとなった。
そのうちの1両、水島臨海鉄道のキハ205を修理・整備するのが同鉄道の関連会社「水島臨海サービス」の冨成さん。この車両を整備してきた経験を持つ、同社でただ一人の整備士だ。
この車両、少し前までは廃車の危機にあった。
2017年に老朽化のため「…
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