熊本地震で被災の鉄道復旧に重ね 旧国鉄時代に走ったSLの修復進む

神谷裕司

 福岡県直方市に、約80年前に造られた蒸気機関車(SL)がある。熊本地震で一部不通となった現在の南阿蘇鉄道、かつての旧国鉄高森線を走っていたSLだ。鉄道の復旧に合わせる形で、直方市で修復作業が続いている。9月30日には、南阿蘇鉄道が通る熊本県高森町の職員5人が視察に訪れた。

 SLは1940(昭和15)年製の「C12形241号」。旧国鉄の高森線を走っていて、74年に引退した。その後、現在の南阿蘇鉄道・高森駅前で展示された。

 ただ老朽化が進み、高森町は解体・撤去などを検討。それを知った直方市頓野のNPO法人「汽車倶楽部(くらぶ)」が「延命させたい」と申し入れた。

 SLは無償譲渡され、2020年11月に倶楽部の敷地に移された。移設費は倶楽部側が負担した。

 倶楽部は現在、ボイラー部と動輪部を分割して修復作業を続けており、11月に合体させる予定。来年夏までに修復を終えるという。

 視察したのは、高森町政策推進課の岩下雅広課長や本川宰(つかさ)・政策企画係長ら。町では地元の老人クラブがSLの手入れを続けていた。本川係長は移設に携わっていて、「本当にきれいになっており、ありがたいこと。老人クラブの皆さんも喜ぶと思う。SLを通して直方市と交流を進めたい」と話した。

 直方市職員2人も視察に参加し、両市町の交流の話も出ていた。

 南阿蘇鉄道(高森町~南阿蘇村、全長17・7キロ)は16年の熊本地震の影響で一部区間が不通となったが、来年夏に全線復旧の予定。倶楽部の江口一紀理事長は「全線復旧時には一番列車の出発と合わせて、修復を終えたC12の汽笛を鳴らすなど、リモートで交流できれば」と話し、両市町の職員に提案していた…

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