園バス置き去り、人手不足との関係は 保育士は地方から都市部へ流出

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田渕紫織 中井なつみ 中村純 魚住あかり 黒田壮吉
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 静岡県牧之原市認定こども園「川崎幼稚園」で、河本千奈ちゃん(3)が通園バスに置き去りとなり、亡くなった。

 当日は本来のバス運転手が休みで、増田立義元理事長(73)が急きょ運転。同乗していた70代の女性派遣職員も臨時だったという。

 園の説明などによると、2人は園児の降車時に車内を確認せず、千奈ちゃんの降車を見落とした。増田元理事長は7日の会見で、「運転を代行したのはこれまで数回程度で、不慣れだった」と釈明した。

園バス運転経験者「意識、欠けていた」

 「保育にも関わりながら運転業務をすると、余裕がなくなるのはわかる」

 保育現場のリスクマネジメントの専門家、遠藤登さんは、過去に幼稚園バスの運転業務をした経験から、こう語る。運転手が足りず、保育と兼務している園は多く、現場の忙しさは解消が必要だと訴える。

 ただ、遠藤さんは、今回の置き去りについては、「子どもを見守る意識」が欠けていたことが大きいと指摘する。

 朝の登園時は、親から子どもを託される重要なタイミング。預かった保育者が、子どもの表情を注意深く見て、「今日の様子はどうかな」「昨日と変わっていることはないかな」と、細心の注意を払いながら把握することが求められる。バスで登園する場合は、その窓口が、運転手や、同乗している職員になる。さらに、登園後も多くの職員が関わっていた。

 「園にいた大人たちに一人一人の子どもを見守る姿勢が徹底されていれば、その子の姿を何とか見ようとしたはず。こうした保育の専門性がなければ、いくら人が増えても事故は繰り返される」

元理事長「保育士が足りない」」

 一方で、人手不足が続いて疲弊する現場は、そうした保育の専門性を発揮しにくい環境でもある。

 増田元理事長は7日の会見で、当日、臨時の運転手3人にも代行を頼んだが断られたと説明。人手不足が影響したかを問われると、「人を雇うことはなかなか大変。需要はあるが、保育士が足りず、運転手も足りない」と話した。

 県によると、同園では167人の園児に対し、保育士や事務職員などのスタッフが39人おり、国の最低基準は満たしていた。ただ、県の担当者は「現場からは基準と実態が合わず、運営が大変という声はよく上がっている」と漏らす。

 静岡にある常葉大保育学部の柴田賢一教授は、今回の置き去りについて、「主因は職員一人一人の確認不足や園のシステムの問題だが、現場が人手不足なら、間接的にはそれが影響しているのだろう」と見る。

 人手が足りずに運転や保護者の電話を受ける係を兼ね、本来の保育の業務に集中できない空白の時間が生まれると、保育士が子どもを見る人数は一時的に多くなり、ミスは生まれやすくなるという。

保育業界は慢性的な人手不足

 この園に限らず、保育の現場では、慢性的な人手不足が指摘されている。

 厚生労働省によると、保育士の採用がピークを迎える今年1月時点の県内の保育士の有効求人倍率は4・40倍、全国平均では2・92倍。求人数は増える傾向にあるが、求職者数が減っている。

 さらに地方では、よりよい待…

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