電動自転車の通学データ使い、高校生が東大の研究者らと地域課題探る

瀬戸口和秀
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 電動アシスト自転車で通学して地域の安全や環境問題を考える――。大阪府能勢町の府立豊中高校能勢分校の生徒たちが、そんなプロジェクトに取り組んでいる。東京大学などの研究者らとの共同研究で、地域社会の問題を「自分事」と考える機会としても期待されている。

 能勢分校は山間部にあり、70人余りの生徒たちは徒歩や路線バス、車による送迎のほかに、自転車で通う。この秋からは、電動自転車に乗る生徒たちの姿が見られるようになった。

 2年の中岡睦喜(むつき)さん(16)もその一人。これまで通学途中にある峠では、自転車から降りて坂道を上っていた。片道約13キロの通学に約1時間かかったが、電動自転車に乗ってからは40分以内で学校に着くようになった。「暑い日は汗だくになって1時間半かかることもあったけど、休憩することもなくなった」と話す。

 同校では2015年度に文部科学省の「スーパーグローバルハイスクール」に指定されてから、生徒が海外事情を研究する取り組みを始めた。

 19年には環境政策の先進国ドイツを訪問。木材チップを燃やして公共施設に熱を供給するバイオマス施設などを視察し、研究成果を発表するなど、地域資源を生かしたまちづくりを考えてきた。

 昨春には「地域魅力化クラブ」が発足。町内のカフェや道の駅を取材したり、能勢の名所を回るバスツアーを企画したりしてきた。クラブ員は現在1~3年生の17人で、中岡さんは部長を務める。

 今回の取り組みのきっかけは昨秋、町などの出資で設立された地域新電力会社の榎原友樹社長らとの話し合いだった。「同社の収益で何ができるか」がテーマで、「電動自転車は貸し出しできない?」という意見が出て、話が動き始めた。

 榎原社長が知人の東京大大学院の北村友人教授(比較教育学)に生徒たちの取り組みを相談。それを機に国際交通安全学会の研究プロジェクトとして、大阪大や大阪市立大、九州大の研究者らも加わって通学などの地域課題の解決に取り組むことになった。

 生徒たちはこれまで電動自転車を試乗し、町内の自転車店から助言も受けながら車種を選んだ。まず3台がプロジェクトの研究費で導入され、クラブ員3人が今年9月から通学で使っている。10月には7台が追加され、校内で希望者を募って利用者が決まった。

 自転車には360度カメラや、速度や距離を計測する機器を取りつけ、データを収集。街灯が整備されていない▽トンネルで危険を感じる▽路面の凸凹が激しい――といった場所について、今後ワークショップで話し合い、改善点などを町に提案する予定だ。

 プロジェクトの前後で、交通安全や、地球温暖化といった環境問題への意識にどのような変化があったかについても、全校生徒へのアンケートで調べる。

 北村教授は「安全面や環境面での課題を見つけ出すとともに、一人ひとりが地域社会について自分事として改めて考える機会になれば」と期待する。

 中岡さんは「大学の先生と一緒に研究することで新しい気づきがあると思う。高校生が声を上げて危険な場所が減ることで、町に貢献できたら」と話す。

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