拡大する写真・図版2016年の総統選で勝利宣言をする民進党の蔡英文氏=台北市、林敏行撮影

台湾からのヒント オードリー・タンを育んだ社会③

 台湾で総統を直接選挙で選べるようになったのが25年前。すでに与野党が3回、入れ替わった。不在者投票を認めていないのに、前回2020年の総統選の投票率は7割を超える。特に、20代の投票率は9割近いとする推計もある。政治に対する若い有権者の関心の高さは社会をどのように変え、政党はどう応じてきたのか。

オードリー・タン氏の言葉
「若い世代は年長者のガイドのようなもので、デジタル化が進む将来に、政治がどう変わらないといけないかを示してくれます」「すべての物には隙間があります。この隙間は光の入り口です。個人が社会に望むことと、社会が個人に求めることの間にも、隙間があり、それに気付いたときこそが社会との対話の始まりなのです」(いずれも台湾メディアの取材に対して)

 台湾で新型コロナウイルスの感染が拡大していた6月はじめ、主な大学の学生会が加わる学生連合会(学連)が、蔡英文政権のリベラル系与党・民進党の立法委員(国会議員)の事務所とLINEで頻繁にやりとりを交わしていた。

 蔡政権はその直前、学生に支援金を出す制度を始めたが、受給条件が統一されておらず、学校によって受給者が不当に制限される可能性が高かった。学生たちは学校当局に改善を訴えたが解決せず、それまでに築いてきた民進党との「ホットライン」を使って直接、政界に働きかけた。立法委員らが政権に交渉したところ、7月になって受給条件が大幅に緩和されたという。

 党や政権にこの要請を伝えたのは、成功大生として学連側の中心だった蔡一愷さん(23)らだった。

オードリー・タン氏招いて討論会も

 蔡さんや民進党関係者によると、6月上旬、加盟大学の学生から学連に相談が寄せられた。蔡さんらは、学連OBが働く議員事務所に相談し、議員に教育部(教育省)と交渉してもらった。また、議員事務所のアドバイスに従って教育部に制度改善の要望書を出した。一方で、学連と民進党青年部が設けるLINEグループで党にも実態を伝えて対応を求めた。蔡さんは「党側とのホットラインを通じ、学生の実態に合わせて政策を変えさせることができた好例でした」と振り返る。

 民進党は蔡総統が過去最多の得…

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