大阪人権博物館が更地に 2022年の再開はめど立たず
昨年6月に休館した大阪人権博物館(リバティおおさか、大阪市浪速区)の建物を解体し、更地にする工事が今月末で終了する。6月末に終了予定だったが、コロナ禍の影響で大幅に遅れていた。博物館を運営する財団は全国水平社創設100年にあたる2022年に別の場所での再開を目指しているが、めどは立っていない。
9月18日、現地を訪れると、鉄筋コンクリート造り3階建ての建物は完全に撤去され、がれきを運び出す作業が続いていた。すぐ近くで暮らす町会長の佐辺隆司さん(70)は「いろんな事情があったんやろうけど、地元の歴史まで消えてしまうようで残念でならない」と話した。
リバティおおさかは、1985年、大阪市の市有地に部落問題を扱う大阪人権歴史資料館として開館。市有地はもともと被差別部落出身の有志が土地や資金を出し合って28年に整備した旧大阪市立栄(さかえ)小学校の跡地で、市は財団に無償で提供した。佐辺さんもその両親も旧栄小学校で学んだという。資料館は95年に拡充され、展示は民族、障害者、性別などの人権問題にも広がり、館名も変更された。
立ち退きは、2008年に大阪府知事だった橋下徹氏が展示内容について、「差別や人権などネガティブな部分が多い」と問題視したことが端緒になった。
橋下氏が大阪市長に転じた後の13年、財政改革の一環だとして府市の運営補助金が廃止され、15年に市有地は有償化された。財団は大阪市に無償の継続や大幅な賃料減免を求めたが受け入れられず、昨年6月、市との間で、市有地を更地にして明け渡す一方、約1億9千万円の土地賃料が免除される和解が大阪地裁で成立した。
担当の大阪市市民局ダイバーシティ推進室などによると、和解では明け渡し期限は6月末になっていたが、コロナ禍による要員不足などで解体工事が遅延。ただ、6月時点で建物はほぼ撤去され、市職員が敷地に入れる状態になったことから返還されたとみなしたという。跡地は民間への売却を検討している。
一方、財団は大阪市港区のビルに事務所を移し、22年の再開準備をしている。ただ、現時点では移転先も基本構想も決まらず、再開のめどは立っていない。
財政難に加え、コロナ禍がネックになっている。所蔵品は大阪市の施設、弘済院(大阪府吹田市)で一時保管されているが、保管期限は23年3月末で、少なくともそれまでには新たな場所を確保する必要があるという。財団事務局の前田朋章さんは「22年の再開はあきらめておらず、有識者や関係団体といろんな可能性について議論している」と話す。
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