野生のライチョウ家族、那須に移送
長野県の中央アルプスから、国の特別天然記念物のライチョウ家族が3日、那須どうぶつ王国(栃木県那須町)にやってきた。母鳥1羽とヒナ6羽で、ヘリコプターで移送された。野生ライチョウを動物園で増やして野生に戻す国内初の「復活作戦」が本格的にスタートする。
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3日朝、那須連山を覆う雲の切れ間からヘリコプターの機体が現れた。獣医師の原藤芽衣さんや飼育員の荒川友紀さんは「元気でいて」とつぶやいた。
佐藤哲也園長が環境省の小林篤専門官からライチョウ親子が入った段ボール箱を受け取った。手に小さな振動が伝わった。佐藤園長は箱に耳を寄せた原藤さんに「もし俺がこけたら、命をかけて箱を守れよ」。
箱の中は透明な板で3部屋に仕切られ、母鳥とヒナが互いの姿を見られるようになっている。板には小さな穴が開いてにおいもわかる。急激な環境変化に戸惑わないように工夫した。
ヘリの機内では保冷剤を箱の中に入れたり、窓を開けたりして、20度前後に保った。
到着した親子は野生復帰順化施設で体重を測った。母鳥は438グラム。7月3日に孵化(ふか)したヒナ6羽(オス2羽とメス4羽)は102~152グラム。体調に問題は見られなかった。移送前に中央アルプスで生活していたケージを屋内放飼場内に再現し、家族を放した。さっそく小松菜や虫餌、コケモモを食べていた。
中央アルプスで約40日間保護し、世話してきた専門官は記者会見で「娘を嫁に出すくらいの期待と不安がありますが、預けっぱなしにせず、協力しながらやっていきたい」と話した。
佐藤園長は「第一関門は生きて那須に到着することでした。これからが正念場。我々が育てたライチョウたちが幸せな里帰りを迎えられる日を楽しみに、頑張りたい」と語った。
那須どうぶつ王国はクラウドファンディングで資金を集め、屋外と屋内に放飼場を備えた順化施設を設けて受け入れ準備を進めてきた。佐藤園長らは7月、中央アルプスを訪れて野生家族の保護活動を見学した。自然界では孵化後1カ月でヒナの半数以上が死ぬが、ケージ保護で生存率は8割前後に上がったという。
ケージで落ち着く家族を見て、佐藤園長はケージの再現を思い至り、高山植物も敷き詰めた。
同じようにライチョウ家族を移送した茶臼山動物園(長野市)と、年内に成長した若鳥を交換し、来年の繁殖に取り組む。早ければ来年にも新しい家族を中央アルプスに返す予定だ。
専門官は会見で「希少種保全のトップランナーとして良い見本を作れるように動物園と連携をとり、来年以降の野生復帰をめざしたい」と語った…
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