公取委「違反認定しない」連発の訳 「確約」ってなんだ

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田中恭太
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 独占禁止法違反を認定したものではありません――。公正取引委員会が違反調査に絡み、こんな形で発表する例が相次いでいる。違反の疑いがある企業に対し、自主改善を「確約」させる新制度が使われた証しだ。問題の早期解消が狙いだが、懸念もある。

アマゾンもBMWも利用、その狙いは

 「あくまでも違反という認定ではなく、『違反の疑い』という認定です」

 今春にあった公取委の会見。独BMWの日本法人に対する調査に関する発表で、担当審査官は説明の前にこう口にした。発表資料にも「本認定は、独禁法の規定に違反することを認定したものではない」とあった。

 この日の発表は、独禁法違反容疑で調べを受けていた同社が、新制度「確約手続き」で認定を受けたという内容だった。制度は、公取委が適用が妥当だと判断した場合に、調査対象の企業は自主改善策を盛り込んだ「確約計画」を提出できるというもの。実効性が認められれば、当局認定はあくまで「疑い」にとどまり、通常発出される排除措置命令や課徴金納付命令も出されない。

 各国に足並みをそろえる形で2018年末に導入。公正な競争環境を迅速に回復するのがねらいだ。確約計画に行為のとりやめや再発防止など、従来の排除命令で命じられてきた項目を盛り込ませることで、同じ効力を持たせている。談合やカルテルは適用外だ。

 これまでに認定を受けたのは8社。公取委が5月に発表した昨年度の独禁法違反事件の処理状況では、法的措置をとった15件のうち、6件を確約が占めた。課徴金の対象となる違反類型でも認定例が出ている。「優越的地位の乱用」容疑があったアマゾンやBMWの日本法人などだ。

双方にメリット「次の事件着手に…」

 「違反認定をされないことは大きい。取引先、営業先に与える印象も大きく違う」。制度を利用した企業の関係者はメリットを語る。別の企業法務関係者は「想定よりも利用が多い」と受け止める。

 別の確約事件に関わった川島佑介弁護士も「しっかりとした計画を出し、その後も内部監査をして報告書を出す必要があり、『無罪放免』とは異なる印象だ」としつつ、「例えば課徴金を受ければ経営陣が株主に訴訟を起こされる恐れもある。ビジネスモデルの見直しにつながりうるなら争う判断もあるが、乗らない手はない」と話す。

 迅速に調査が進むのは、人的リソースに限りがある公取委にも好都合だ。特に優越的地位の乱用事件では、時に数百に上る取引先ごとに違反認定をする調査や、認定範囲をめぐる訴訟が長期化しがちだった。訴訟で争われる恐れはなく、事前の裁判対策も不要だ。公取委幹部は「調査はかなり短縮できているだろう。確約計画が認定できれば、次の新たな事件にも着手できる」と語る。

■公取委「行政処分だ」「免除…

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