米石油パイプラインがランサムウェア(身代金ウイルス)攻撃を受けて操業を停止した問題で、ハッカーへ身代金440万ドル(約4・8億円)を支払ったことを運営会社の経営トップが認めた。米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)が19日報じた。

 WSJによると、運営会社コロニアルパイプラインのジョセフ・ブラント最高経営責任者(CEO)は取材に対し、被害の大きさや復旧までの時間が不透明だったため支払いを許可したとして、「非常に議論を呼ぶ決定だとわかっている」と述べた。「軽い気持ちで決めたわけではない。このような人たちにお金が渡るのは気持ちの良いものではなかった」と述べる一方で、「国にとっては正しいことだった」とも話した。

 コロニアルはハッカー集団「ダークサイド」の攻撃を受け、7日に操業を停止した。WSJによると、攻撃は7日午前5時半ごろに発覚した。業務システムに直接の影響はなかったが、ハッカーの侵入状況の調査や業務システムへの侵入を防ぐため、約1時間かけてパイプラインを止めたという。

 コロニアルは12日に操業を再開し、製品供給は通常に戻った。だが、一部のシステムの復旧には数カ月かかり、最終的な損害額は数千万ドルにのぼる見込みという。

 コロニアルはメキシコ湾岸からニューヨーク湾まで8800キロ以上のパイプラインを運営し、シェアは東海岸で消費される燃料の45%を占める。操業停止でガソリンの供給が一時的に途絶えるなど、市民生活に影響が出た。(ニューヨーク=真海喬生)