「正しい知識広げて」選択的夫婦別姓に賛成、愛媛は最低
夫婦同姓か別姓か自由に選べるようにする「選択的夫婦別姓」について民間団体が調査したところ、愛媛県民の賛成の割合が全国で最も低かった。結婚後も元の姓のままでいたいと、県内でも制度導入を求める動きはあるものの、議会での議論は進んでいない。
調査は昨年10月、早稲田大学の棚村政行教授の研究室と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が実施。インターネットで全国の20~59歳の男女7千人が回答した。
全体では、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」「自分は夫婦別姓が選べるとよい。同」と答えた賛成派が70・6%、「自分は夫婦同姓がよい。他の夫婦も同姓であるべきだ」とした反対派が14・4%だった。
愛媛は賛成派が59・7%と最も低く、反対派が25・4%。賛成は女性に多く、「同姓にしろ別姓にしろ、選択出来ることが重要だと思う」といった理由が挙がった。一方、反対は男性に多く、「日本古来の伝統を維持していくべきだと思う」などの意見があった。
県内でも、選択的夫婦別姓の制度導入を求める動きは起きている。2019年5月には、今治市出身でソフトウェア会社「サイボウズ」(東京)社長の青野慶久さんが、制度の法制化を国に求める意見書を提出するよう、今治市議会に陳情を出した。昨年の県議会2月定例会にも、制度導入を求める請願が提出された。
ただ、どちらも賛成少数で不採択となった。「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」によると、国会での議論を求める陳情や意見書を議決した地方議会は177件(昨年12月21日現在)に上る。香川県や高知県の自治体でも採択されているが、県内はゼロだ。
賛成派が愛媛で議論が進まない理由として挙げるのが、伝統的な家族観を掲げる議員が多く、制度について知る機会も少ないこと。県議会に出された請願をめぐっては、自民党の森高康行県議が委員会審査で「安易な選択的夫婦別姓は犯罪が増えるのではないか」と発言し、批判を浴びた。
自民党内では昨年末、第5次男女共同参画基本計画案の議論が紛糾。反対派に押される形で、第4次計画にあった「選択的夫婦別氏」の文言がなくなった。発言から約1年が経ち、森高県議は「私の考え方は変わっていない」という。
「今だけの、親だけの利益のため、という考え方で子どもが親と別姓になる。生きづらいから選択するのではなく、ファミリーネームによる結束が必要」「今でもモバイルの影響で親子の関係が希薄になっていて、非行が多様化している。親子別姓はそこに拍車をかける」
県議会に請願を提出した「新日本婦人の会」県本部の来島頼子会長は、主要国の中で唯一別姓が選べない日本の現状に危機感を示す。「地方議員にももっと勉強してもらえる機会があれば、家族の形が変わるとか、親子間がおかしくなるということではないと知ってもらえるはず」と話している。
「時代は変わった」
サイボウズの青野さんは、夫婦別姓を選択できない戸籍法の規定は憲法違反だとして国に損害賠償を求める訴えも起こし、姓が変わることで生じる不利益を社会に訴えてきた。制度導入をめぐる動きや愛媛の現状について聞いた。
――民間の調査で、制度への賛成は愛媛が全国最下位でした
それでも、随分賛成が多いんだなと感じました。60、70代が調査対象に入っていないのもあると思いますが。陳情を通して、議員さんが古いんだな、という印象を受けました。
――「安易な選択的夫婦別姓は犯罪が増えるのではないか」という発言もありました
犯罪率が上がるというのはどういうロジック? 姓をコロコロ変えるのではなく、一生姓を変えない人が増えるわけですから、違いますよね。反対している人の特徴は制度をよく知らず、分かっていないことにあると思っています。こちらが説明していくなかで、納得してくれる政治家もいる。もっと知ってもらう必要があります。
――保守派の理解は広まっていますか
そうですね、家制度が崩壊すると言われますが、日本に家制度はありません。親子別姓は今もたくさんいます。国際結婚や事実婚もそうですし、離婚しても変わります。とにかく一番大事なのは正しい知識を広げること。知識は広まるということは、これまでの活動で分かっていますし。勉強する気がない人が反対している感じですかね。
――愛媛の現状をどう見ていますか
閉鎖的な風土を感じてしまいますよね。女性が社会で働く割合も、私が子どものころと全然違います。今のままで問題ないのではなく、今問題が起きているから陳情が上がっているわけですから。クレジットカードにしても、ネットにしても、アイデンティフィケーション(同一性の確認)のコストが昔と比べて相当変わっている。銀行口座の名義だけ変えていればよかった時代とは違います。地域のブランドも下がっていきます。危ないですよ。
――今後、県内で陳情などはされますか
今は予定はありません。というのも、この問題、僕の中ではリーチがかかったと思っている。自民党の国会議員が動き出していて、総理も代わった。菅(義偉)さんは元は賛成だったし、河野(太郎)さんは前からずっと賛成だったし。保守派の筆頭だった稲田(朋美)さんも賛成派として中で動き回ってくれた。立法も近づいてきていると思っています。
――社会を動かす要因はSNSにもあったそうですね
私も社長業があって、活動にはそんなに力を入れられない。でも、ネットメディアを使えばそれほど時間をかけなくても知識を広げられるようになりました。SNSで反対する人も、どんどん減ってきている感覚があります。根強く反対する人って、数えられるくらいになってきている。
――状況の変化は市民レベルでも感じられますか
そうですね。僕の同級生が母校の今治西高で先生をしているんですが、授業の中でディベートがあって。そこに高校生たちが自分で持ってくるテーマが「別姓」なんですって。結婚までまだ距離がある高校生でも知る問題になっていて、間違いなく時代が変わってきている実感があります。
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