デゴイチ和歌山から新潟へ 組み立て走行へ

高橋俊成
【動画】新潟にやってきたデゴイチ。和歌山県から約560キロの道のりを運ばれてきた=高橋俊成撮影、えちごトキめき鉄道提供
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 「デゴイチ」の愛称で知られるD51形蒸気機関車が今月、直江津駅(新潟県上越市)にやって来た。集客の目玉にしようと、えちごトキめき鉄道が和歌山県から運んできた。披露は28日。走れる状態で保存し、駅構内で体験乗車の計画もある。(高橋俊成)

 1日朝、トキ鉄の直江津運転センターにとまった5台のトレーラーの荷台に、黒く輝く鉄の塊があった。炭水車やボイラーなどに分割し、和歌山県から約560キロの道のりを3日かけて運んだデゴイチだ。

 1943年製で、現役時代は岐阜県などで活躍していた。引退後に保存していた、鉄道輸送を手がける「アチハ」(大阪市)にトキ鉄の鳥塚亮社長(60)が「地元の人が鉄道に愛着を持つきっかけに」と依頼。5年間のリースが実現した。

 トレーラーで運ばれてきた全長19・73メートルの巨体は、ミリ単位の精密な作業で組み立てられた。

 先にトレーラーの荷台からつり下ろした車輪部分に、2本のクレーンでつったボイラー部を上から組み合わせる。1ミリでも配管がずれれば、かみ合わない。つり上げ開始から30分以上。鉄道輸送に精通したアチハのスタッフが無線でやり取りしながら、少しずつ作業を進めた。

 国鉄時代に車庫などとして使われた直江津運転センターは、車両の方向転換に用いた転車台が残る。今回、SL搬入にあわせて修理し、動くように。組み立て終わったデゴイチを載せて、ゆっくりと1回転した。

 動力は蒸気でなく圧縮空気に変わったが、このデゴイチは今も走行可能だ。和歌山では2017年から同県有田川町の公園で保存され、公園内の線路上で走行することもあった。直江津でも、来年度に向けて駅構内での運転や体験乗車の計画がある。鳥塚社長は「世代を超えた地域の宝物として活用していきたい」と話す。

 デゴイチの整備技術は、元国鉄マンからトキ鉄の若手整備士に受け継がれる。

 教えるのは、アチハでSL整備専門の関根利夫さん(72)。国鉄時代からSL整備に携わり、キャリアは50年を超えた。「小さい頃からSLが好きでね。自宅のそばを走る姿に憧れたんだ」。退職後も秩父鉄道埼玉県)などでSLの整備を担ってきた。

 「SLは油が命」と関根さんはいう。注油部は車輪を中心に100カ所以上。車軸と車輪の隙間は0・6ミリしかない箇所もあるといい、「油が足りないと、すぐ摩耗する」と話す。気温によって油の粘度が変わるため、季節ごとに調整が要る。和歌山より冷える新潟ではそれぞれの部品まで油が流れにくく、より入念な調整が必要だ。

 「SLを整備するなんて思いもしませんでしたよ」と話すのは、トキ鉄の整備士、伊藤洋平さん(32)。今まで整備してきた平成製の車両とは違い、「電気的な部品が少なくて覚えることも多いけど、すごく勉強になる」という。

 関根さんは、今も全国各地でSLを整備している。「SLは私にとっちゃ子どもみたいなもん。お客さんが喜ぶ顔、手を振る姿……。そういう光景を見るとうれしいよね」と話した。

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