(2月6日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 これまで「価値観」と書かれてきたカチカンが「価値」になっていたら、やはり違和感がありますか? 何に価値を認めるか、判断を下す時の物の見方を意味する「価値観」を「価値感」と表記している例が最近目立つ、という声があります。

 20年前にはすでに、課題のリポートに「価値感」と書く学生が半数以上だったというのは、武庫川女子大学で教授(臨床心理学)を務める佐方哲彦(さかた・てつひこ)さんです。

 佐方さんは表記の変化は社会の変容を反映している、と考えています。「主体的に物事を捉える行為を表す『観』に比べ、『感』には受動的で直感的な意味合いがあります。時間をかけて自分なりの意見を吟味するよりも、誰かに共感してもらえるよう、あいまいで感覚的な表現を選ぶ傾向は、現在さらに進んでいるのではないでしょうか」