(3月6日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「まぐれです。いつぶりだろう」。プロ野球で昨年、初本塁打を放った選手のコメントです。この「いつぶり」という言葉に違和感はありませんか。以前は若い人が使う言葉のイメージでしたが、最近では若者以外も使うようになりました。

 「いつぶり」の「ぶり」は、辞書には「《時間を表す語に付けて》それだけの時がたった後に、新たにまた、そうする(なる)ことを表す」とあります。本来「~ぶり」の「~」には経過した「時間」が入り、ピンポイントの「日時」は入りません。

 明鏡国語辞典には「大学二年ぶりの再会など、『ぶり』の前に〈物事の始点〉がくる言い方は誤り」とあります。冒頭のコメントで、前回本塁打を放ったのが具体的にいつなのかを話題にしたいなら「いつ以来」とするといいのでしょう。