(5月22日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 「リアル○○」という表現が気になります。たとえば「リアル書店」。街にある書店が、あえて「リアル」をつけてそう呼ばれています。「現実の様子」や「写実的」といった、リアルの語がもともと持つニュアンスではしっくりきません。

 街の本屋を指す「リアル書店」が小紙で最初に使われたのは2000年末の読書面。フリーライターの永江朗さんが、ネット書店サイトが増えた業界を振り返る記事で使っています。

 多くの辞書は、見出し語として「リアル書店」を載せていません。12年に出た大辞泉(第2版)にもありませんが、ネット版のデジタル大辞泉では、「実店舗をもち、実際に書籍や雑誌を並べて売っている店。現物を手にとることができる書店。ネット書店に対していう」としています。

 14年改訂の三省堂国語辞典(第7版)は、リアルの用例に「リアル書店」を加えました。その語釈の説明として「21世紀になって広まった言い方」と入りました。似た経緯で使われるようになった「リアル店舗」。ネットショッピングの急速な普及が背景にあります。