(5月31日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)

 新製品の紹介記事を校閲した際、「専門家が魅力をひもときます」という表現を見ました。この「ひもとく」は、「解説する」という意味のようです。

 「ひもとく」は、巻物などのひもをほどいて書物を読むことをいうのが一般的でした。でも最近は「疑問を解明する」「背景を説明する」といった意味で使われることが増えています。

 「広辞苑」は、「ひもとく」に二つの項を挙げています。一つは「繙く」で、書物の帙(ちつ=カバー)のひもをほどいて読むこと。もう一つは「紐解く」で、下衣のひもをほどくことや、つぼみが開くこととあります。

 他の国語辞書もおおむね似た説明をしています。ただ、「三省堂国語辞典」は「謎を解く」ことも指すと加えています。

 現代では、ひもをほどいて何かを読む機会はほとんどありません。「繙く」ではなく「紐解く」の方から連想が広がり、字面からも「謎解く」につながってきたとも考えられます。