(8月10日付朝刊に掲載した「ことばの広場」を再録しました)


 大阪で生まれ育った私。東京に住んで5年ですが、語尾や発音だけでなく何げなく使う日用品の呼び方が実は関西特有と知り、驚くことがあります。

 最近驚いたのは、私が「画びょう」を指して使っている「押しピン」という言葉を「東京では使わない」と言われたこと。もちろん画びょうという言葉は知っていますが「押しピンの正式名称」と思っていたのです。辞書を見ると押しピンは「西日本方言」「関西での表現形」とされていることが多く、掲載していないものも。「平らな金属が付いてるのが画びょう、プラスチックが押しピンじゃないの?」と話す同僚もいました。

 2択の質問に答えてもらい出身地を当てる「方言チャート」をウェブで公開している篠崎晃一・東京女子大教授(方言学)によると、2013年の公開当初は出身を東西に分けることを想定した「押しピン」の設問がありましたが、東日本出身でも「使う」の回答が多かったため、設問から外したそうです。金属製とプラスチック製があることから同僚のように「画びょう/押しピン」と使い分ける人もおり、実は方言から抜け出しかけているのかもしれません。