(社説)台風災害ごみ 円滑な処理が復興の礎

社説

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 台風19号の被災地ではこの週末、再びまとまった雨が降ると予想されている。知人やボランティアの手を借りながら、片づけに取り組む人も多いだろう。周囲の状況に常に気を配り、身の安全を図ってほしい。

 環境省によると、今回の災害ごみの量は昨年7月の西日本豪雨の200万トンを上回り、数百万トンにのぼる見込みだ。使えなくなった家具や家電が道端などに山積みになっている映像が、各地から届いている。

 廃棄物の処理が円滑に進むかどうかは、復旧・復興の行方を左右する。生活圏に残ったままでは、自動車や人の通行が妨げられるばかりでなく、悪臭、害虫、粉じんなども広がる。人々の健康を保つためにも、仮置き場を早急に整備して移転を急がなければならない。

 あらかじめ、可燃、不燃、危険、リサイクル可能などにごみが分かれていれば、回収後の手間がはぶけて作業が進む。仮置き場に搬入する際、できる限り分別するように心がけたい。

 それらは最終的に焼却施設や埋め立て処分場に運ばれる。過去の震災などでは、処理を終えるまでに年単位の時間がかかった。西日本豪雨の廃棄物も作業完了は来年夏の予定だ。

 今回の被災地は、東北から関東、東海にかけて広い範囲に及ぶ。一義的に責任を負うのは市区町村とはいえ、任せきりにしていては作業が滞るのは必至だ。非常時だからこそ県や国がしっかり支えてもらいたい。

 気がかりなのは、水をかぶって動かなくなった焼却施設や、道路が壊れて近づけない処分場が各地にあることだ。自治体の枠を超えた広域処理が欠かせない。東日本大震災の際は、がれきを関東や関西、北陸、九州などに運んで対応した。ここでも国が前面に出て、仲介・連携役を果たす必要がある。

 大きな地震や洪水などがあるたびに、災害ごみの扱いが課題に浮上する。このため環境省は5年前、処理計画の策定を全国の自治体に求めた。廃棄物の発生量を予測し、運搬や分別から最終処分までの手順を定めておくことで、現場が混乱しないようにするのが目的だ。

 ところが、実際に計画を作った市区町村は全体の3分の1にも満たない。心もとない限りで、これではいざという時にあわてることになる。

 人手が足りない、過去に大きな災害が発生していないなど、それぞれの理由があるのかもしれない。だが気候変動の影響もあって、台風や雨の降り方は激甚化している。地震もいつ、どこで起きるか分からない。すべての自治体が、わがこととして準備を整えておくべきだ。

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