子育てを助けてくれた母の介護のため 女性副市長、悩んだ末の離職

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前川浩之 浦島千佳
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 愛知県西尾市の副市長が3月31日、親の介護を理由に任期を2年残して職場を去った。同市として初の女性副市長だったという。働きながら介護をする人は全国に約364万人。企業や役所といった組織で指導的な立場に就いている人もいる。女性リーダーを増やそうという社会の流れの中、専門家は「管理職の介護離職が女性の問題としても重要になってきている」と指摘する。

 「母にとって娘の私が面倒をみるのが一番良いと考えた。悩んだ末の結論」。31日付の退職を前に山口瑠美子さん(61)はそう語った。

 中村健市長に請われ、愛知県庁をやめて、山口さんが副市長に就いたのは2022年4月。議会対応や緊急時の対応も必要な特別職の公務員だ。当初は西尾市内で単身赴任したが、「よく転ぶようになった」という高齢の母が心配で、昨春から日進市の自宅で母と住み始めた。

 昨年6月、母が転倒し、背中と腰の骨を折って2カ月間入院。本格的な介護が必要になった。介護保険でデイサービスやヘルパーなどを頼みつつ、毎朝6時に自宅を出て西尾市役所まで約40キロを車通勤する生活。「車の運転が大変。公職者なので、小さくても事故を起こすわけにもいかず、すごい緊張感でした」

 午後9時に就寝しても、気になって早朝に目覚めることもあったという。

 公務員の夫や息子も介護休暇を取るなどして手伝ってくれた。それでも「娘の私でないと母も心細いようで、言いたいことも言えないようだ」と気づいた。元々、「夫の親の介護は夫、私の親の介護は私」と責任を決めた「平等な夫婦」だったが、「息子2人の子育てで母に頼ってきた。母とは『離れられない仲』」と感じたという。

 副市長就任後、女性だけだった秘書政策課の窓口の職員に男性もいれるなど、市役所に変化ももたらした。地域産業の活性化にも取り組んだが、1月の能登半島地震を見て、災害時に市役所に駆けつけられるか考えた。「矢作川の橋が渡れないかも」と思うと、「副市長として役に立つのか」と悩んだという。

 ただ、今回離職するが、「キャリアはなくなるものではない」とも思う。培った人脈を駆使し、リモートワークで自宅でできる仕事もあると考えている。前川浩之

年間約10万人が離職

 就業構造基本調査(2022年)によると、働きながら介護をする人は全国に約364万人。

 「介護離職の構造」などの著書がある労働政策研究・研修機構の池田心豪・副統括研究員によると、管理職の介護離職はもともと、未婚率の上昇やきょうだいの減少で男性介護者が増えてきたことにより、男性の問題として注目された。そこに「女性活躍」の流れが加わったことで、女性の問題としても重要になってきているという。

 介護離職を防ごうと、16年には育児・介護休業法が改正された。それでも年間約10万人が離職している。

 池田さんは「時間的に仕事と…

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