「普通の日銀」なお遠く 「異常」な政策、11年でようやく終焉

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編集委員・原真人
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 普通の金融政策に戻る――。

 この言葉にこそ、植田和男総裁の人知れぬ思いがこもっていたのかもしれない。

 日本銀行が19日に開いた金融政策決定会合(年8回開催、メンバーは総裁以下9人)で、11年間続けてきた異次元緩和の終了を決めた。その後の記者会見で「異次元」後の新しい政策の呼び名を尋ねられた植田総裁が持ち出したキーワードが「普通」だった。

 たしかに、長期に及んだ異次元緩和の政策メニューはどれも「異常」だった。日銀はこの日、そうした政策をすべて閉じ、異次元緩和前の振り出しであるゼロ金利状態に戻ることを決めた。

「効果期待できない」それでも異次元緩和に踏み切った理由とは

 異次元緩和は、2012年末に政権復帰した安倍晋三首相(当時)の「輪転機をぐるぐる回して日銀に無制限にお札を刷ってもらう」という、アベノミクスの大号令で始まった。

 異次元緩和の核心はもともと、日銀が紙幣を刷って国債を買い支える「財政ファイナンス」だった。

 その異次元緩和がスタートする前、ある財務省幹部が悲壮な表情でこう語っていた。「サイは投げられた。こうなったらやるしかない」

 日銀や財務省には異次元緩和に強い懸念を抱く幹部が少なくなかった。異常なマクロ政策を押し通せば、通貨円や日本国債の信認が著しく失墜しないかを案じたのだ。

 「日銀の政策によって物価目標の2%になんかならないし、日本経済が良くなるなんて(当初から)思っていなかった」

 黒田日銀の初期に理事として仕えた門間一夫氏は昨年、当時の思いをこう振り返った。では、なぜ異次元緩和をやらねばならなかったか。

 「日銀が全力を出してデフレ

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