護岸改修で消失、諏訪湖で魚やエビの生息環境再生へ 浮き魚礁を設置

佐藤仁彦
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 護岸工事などで減ってしまった魚やエビなどの水生動物のすみかを再生し、諏訪湖の自然環境を取り戻そうという長野県の取り組みが、諏訪市豊田沖で始まった。県諏訪地域振興局が湖上にいかだ状の浮き魚礁を設置。月に1~2回、投網を打って在来魚の生息状況を調べ、効果を確かめる。

 浮き魚礁は2メートル四方の木枠に土を敷いたもの。1月に9基を湖の南岸から約20メートルの沖合に浮かべて固定した。

 周辺はかつて「渋のエゴ」と呼ばれた水辺。エゴとは入り江という意味で、ヨシやマコモといった水生植物が繁茂し、野鳥やトンボが飛び交う多様な生物の生息域となっていた。

 ところが埋め立てや護岸改修が進み、植物の群落は消失。1980年に554トンあった諏訪湖全体の漁獲量も、2022年は8・2トン(うち7・5トンはワカサギ)と激減した。

 そこで地域振興局は2022年度、湖の沿岸域に水生植物帯を再生して1960~70年代の水辺環境を取り戻すアイデアを公募。県の予算編成に県民の意見を反映する「県民参加型予算」として、諏訪湖漁業協同組合の提案が採用された。

 今年度当初予算に計上された浮き魚礁設置の事業費は約900万円。魚礁の北側に丸太の杭を一列に並べて打ち込み、真下の湖底(水深約3メートル)に直径30センチほどの石を積み上げて、テナガエビなどの生物が隠れやすい空間を用意した。

 魚礁の上には今後、ヨシやマコモを移植。植物の根を水中にまで伸ばすことで、かつてよく見られたタモロコ、モツゴ、ウキゴリといった魚の産卵場所をつくる。県水産試験場諏訪支場の協力も得て、試行的な取り組みとして数年は継続。効果を検証する。

 15日に報道機関向けの現地見学会を開いた県諏訪農業農村支援センターの松崎良一所長は「諏訪湖を生物多様性に満ちた空間に戻したいという県民の声を受けてのプロジェクト。ここで生まれ育つ魚やエビを増やしていき、効果が認められれば他のエリアにも広げたい」と話した。佐藤仁彦

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