2017年1月31日00時15分
2017年1月31日00時15分
学生の頃、染め付けの小皿を買って以来、古い器が好きになった。といっても、買えるのは財布が許すガラクタばかり。古い器集めは卒業しようと思うが、骨董(こっとう)店の前は素通りできない。
今、気になってしかたないものがある。築地市場の地中に眠っているかもしれない器である。
築地は江戸時代の埋め立て地で、市場のある場所は有力大名の下屋敷があった。銀鱗文庫が入っている建物は、松平定信の「浴恩園」があった場所だ。寛政の改革(1787~93年)後、政治の表舞台をしりぞいた定信は、ここで庭つくりを楽しんだのだった。
宮崎県生まれ。婦人画報社の編集者を経てフリーランスに。ファッション誌や料理本などを手がける。1998年、築地市場の水産仲卸「濱長」のチラシ作りを頼まれたことをきっかけに同店で働き始める。2010年から築地市場の文化団体「築地魚市場銀鱗会」の事務局長。著書に『築地魚河岸 寿司ダネ手帖』、編著に『向田邦子の手料理』など。