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カオスの深淵 立ちすくむ税金

立ちすくむ税金
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立ちすくむ税金

(左)モラル向上のためインドネシアの租税総局で行われている「朝のお祈り」。イスラム教のコーランを引用した祈りの言葉が、スピーカーから流れる
(右)インドネシアの汚職撲滅委員会のロビーには、高級時計や商品券など押収したワイロが展示されている=いずれも、ジャカルタ、西本秀撮影

インドネシア「汚職大国」もう許さない

 「汚職大国」と呼ばれたインドネシアで近年、税をチェックする意識が高まっている。
 「神よ、お導きください。私たちの国が道徳的であるように」
 朝8時、ジャカルタ。国税庁にあたる租税総局の一日は、「道徳」を誓う、職員たちの祈りで始まる。狙いは汚職防止だ。
 不服審査部門の男性職員が摘発され、1千億ルピア(約9億円相当)をため込んだことが発覚。しかも裁判官を買収し、一度は無罪判決を受けていた。男の名から「ガユス事件」と呼ばれる。
 税務行政への信頼は失墜した。「もし俺がガユスだったら/すべての願いがかなう/判決も買えるんだ」。ネットに投稿された風刺の歌は200万回以上再生された。
 ただ、不正が摘発されるようになったのは、社会の変化の表れでもある。国の独立機関、汚職撲滅委員会は2003年の設置以来、約1300件の贈収賄を暴いた。本部ロビーには、高級万年筆や腕時計、商品券など押収品が陳列されている。人々の期待は高く、入り口では地元メディアが一日中待機している。
 経済成長に加え、所得の捕捉が進み、所得税を納める国民がこの5年で7倍に増えた。納税者意識も高まる。
 5月16日、上院にあたる地方代表議会は、日本の「事業仕分け」を学ぶため、これを考案したシンクタンク「構想日本」を招いた。参加したアンナ議員は「中間層が育ち、政治にクリーンさや透明性を求めている。納税者の期待に応えたい」。(西本秀)

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