死ね、デブ…言われても我慢、積もる無力感 知られざる刑務官の苦悩

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黒田早織

 「仕事にやりがいは正直、ないです」

 府中刑務所(東京都府中市)の男性刑務官(43)はこう言い切った。「警察はいいですよね、逮捕したら社会に注目される。その後の長い年月、面倒を見るのは私たちなのに」

取材の経緯

 昨秋、一般市民と府中刑務所職員の交流イベントを取材した際、ある刑務官が「仕事にやりがいはない。社会に現状を知ってほしい」と語りました。
 主催する法務省職員らもいる公の場での発言。刑務官の苦悩はそれほどなのかと衝撃を受けました。
 詳しい話を聞きたいと思い、後日、同刑務所に正式に個別取材を申し込みました。

 約1700人が収容される日本最大規模の同刑務所。受刑者約40人の担当として、工場で刑務作業を監督する。受刑者の間を巡回して一人一人に注意を払い、合間に個別の面談や事務作業、トラブルにも対応する。

無力感を抱く「再会」

 勤続20年。時には、本気で諭した言葉が受刑者に届いたと思えることもないわけではない。だが、やりがいとして感じることはほとんどないという。

 同刑務所は「犯罪傾向が進ん…

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この記事を書いた人
黒田早織
ネットワーク報道本部|東京駐在
専門・関心分野
司法、在日外国人、ジェンダー、精神医療・ケア
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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2025年2月9日18時8分 投稿
    【視点】

    「感情労働」は、働くことで感情がすり減る感覚をもつ人の実感から見いだされた概念だ。「自らの感情を抑圧して表情や声、態度でその職務に求められている感情を演出することの負担が大きくても、相互に交わす感情の釣り合いが取れていればやりがいを感じられ

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    BossB
    (天文物理学者・信州大准教授)
    2025年2月10日19時57分 投稿
    【視点】

    刑務官の方々、いつもありがとうございます。 刑務官の仕事の困難さが社会や国民にあまり、あるいは全く理解されていないという点、まさにその通りだと思います。社会の基盤を支える大切な仕事をされている刑務官の方々が、やりがいを感じられず、自分たち

    …続きを読む