3倍で転売される「刑務所製せっけん」 専門官も驚く品質維持の現場

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渡辺芳枝
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 刑務所で作られたせっけんが通販サイトを通じ、定価の3倍以上で転売されている。汚れがよく落ちると評判のロングセラー商品だが、コロナ禍で生産量が減少して、転売のターゲットになったようだ。販売する公益財団法人「矯正協会」(東京)は購入制限を設け、買い占め対策をとっている。

 転売されているのは、横須賀刑務支所(神奈川県横須賀市)で作られている「ブルースティック」。長さ14センチ(150グラム)の固形せっけんで、刑務所作業製品を専門に扱う矯正協会の直営店舗や常設展示場、直販サイトで販売されている。

 3本セットで定価は400円(直販サイトは3本組み2個セットで800円)で、昨年度は約4万9千セット(約15万本)売れた。全国の刑務所作業製品の中で、売り上げトップの人気商品となっている。

 ところが現在、大手の通販サイト上で3倍以上の最高1300円前後で転売されていることが確認されている。

 以前から「泥汚れがよく落ちる」として人気だったことに加え、コロナ禍で刑務所の工場作業が制限されて製造数が減った。そこに転売目的とみられる買い占めも始まり、常設展示場の「キャピックショップなかの」(東京都中野区)には「買えなくて困っている」という声が届くようになった。このため一時期は「1家族2セットまで」に制限、現在でも「6セットまで」としている。

 直営サイト(https://www.e-capic.com/別ウインドウで開きます)でも「購入は1日1回、1セットまで」と制限している。

 定価を超える額での転売について、矯正協会の桜井智・刑務作業協力事業部副部長は、法的には問題がないとしつつ「安い、品質がいい、というのがキャピック(刑務所作業)製品。高値で流通してしまったら、ブランドが損なわれてしまうので認められない」と話す。

受刑者のせっけん作りを見に行った

 横須賀刑務支所は執行刑期1…

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    杉田菜穂
    (俳人・大阪公立大学教授=社会政策)
    2023年7月12日15時29分 投稿
    【視点】

    奈良少年刑務所で開催されていた「奈良矯正展」のことを思い出した。刑務作業の様子が分かる展示や刑務作業で製作された刑務所作業製品の展示販売が行われ、私が訪ねたときは木製の家具が特によく売れていたように記憶している。 刑余者(刑罰を受けた

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    岩尾真宏
    (朝日新聞名古屋報道センター長代理)
    2023年7月12日10時20分 投稿
    【視点】

    横浜刑務所で作られているうどんの取材をしたことがあります。こしが強く、刑務作業製品の販売イベントでも抜群の人気ということで、刑務所の担当者の方が「受刑者の励みになっている」と話していました。当たり前ですが、食品をつくっている現場でしたので、

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